ピアノの練習に音階の練習は必要か ~その1 音階練習の仕方~

こんにちは♪

ピアノの練習に音階の練習は必要なのかどうか・・・
今日は音階の練習についてです。

音階の練習

レッスンに音階の練習を取り入れるかどうかは賛否両論だと思いますが、私は賛成の方です。
生徒さんによってはそこまでやらなくても楽譜が読めて弾けさえすれば必要ないし、しかも調子記号がついたとしても♯や♭がよくついても2つくらいまでが精一杯なので・・・
という場合もあるでしょう。

でも、私はこれまでにずっと全ての生徒さんに可能な限り音階練習の課題を出してきました。
やらないよりもやった方がいいと思うことがたくさんあるからです。
機械的に練習するだけでは絶対に楽しくないと思われる音階の練習。
今回はその練習の仕方や課題の出し方をお話ししたいと思います。

 

音階練習を始めるのは何歳から? どんな教材を使う?

レッスンの様子を見ていて、その子にできそうだと思った時に始めるようにしています。
なので幼稚園から始める子もいれば小学校に上がってから、もしくは小学校の中学年くらいから始める子もいます。

昔、長音階が12個、短音階が12個ずらりと書いてある楽譜を使った時に、まずそれを見てうんざりとしてしまう生徒さんがほとんどでした。
そうですよね。
同じようなものがたくさんずらりと並んでいて、しかも指使いがなんかちょっとずつ違っていて・・・
以来、音階の練習は楽譜を使うのをやめました。

5線が細かくなくて見やすい横長の4段のノートを使い、5線に「書きながら」「話しながら」「一緒に考えながら」「一緒に弾きながら」レッスンしていくことで、なるべく興味をもってもらうように工夫しています。

 

ハ長調の練習に時間をかける

一番初めはハ長調。
1オクターブの音階を山のようになった上向形と下降形にして全音符で書きます。
ドレミファソラシドシラソファミレドと、いった具合です。
そして指使いを一緒に考えながら書き込んでいきます。

音階に限らず子どもにとって指使い通りに弾くというのは、億劫に考えてしまう子が多いです。
本当は一番大切なことなのに、正しい音を弾くことだけに集中してしまうんですよね。

指は右手、左手それぞれ5本ずつしかありません。
ドレミファソラシドをどうやったら5本の指で弾くことができるかを一緒に考えながら指番号を一つずつ書き込んでいきます。

右手の1番、2番、3番でドレミの音を弾いたらその次もそのまま4番、5番と続けていったらどうなるのか。
じゃあ、4番ではなくて1番の指を使ったらどうなるのか・・・
という具合に試しながら指使いを書き込んでいくのです。

そうすると「指使いを考えながら弾く」ことにより、正しい指使いが身に付き、指番号があらかじめ書いてある楽譜を見て、機械的に何度も間違えながら練習するよりも効率がいいように思います。

そして左手も同じように考えていった場合に、右手とは違う指番号になることで両手の指の構造が左右対称であることを再認識します。
この左右対称であるということも特に小さな子にとっては理解するのに時間がかかる場合があります。

こうしてハ長調の音階を丁寧に覚えて、まずは片手ずつ、慣れてきたら両手で弾けるように練習します。
そして指使いをきちんと覚えて弾けるようになるまで次の調には進まず、できるようになるまで根気よく見守ってあげるようにします。

ハ長調(調子記号なし)が弾けるようになったら、ト長調(♯1つ)ニ長調(♯2つ)イ長調(♯3つ)ホ長調(♯4つ)ロ長調(♯5つ)へ長調(♭1つ)変ロ長調(♭2つ)変ホ長調(♭3つ)変イ長調(♭4つ)変ニ長調(♭5つ)変ト長調(♭5つ)
のように、調子記号が増えていく順番に進めるようにしています。

 

ト長調からホ長調まで

ハ長調がきちんと弾けるようになると、ト長調からホ長調までは案外スムーズに弾けるようになります。
ト長調からシャープが一つずつ増えていきますが、指使いはハ長調と同じ指使いで弾けるからです。
この過程でどうして調子記号が必要になってくるのかや、シャープの調子記号がつく順番などを覚えるようにします。
調子記号の必要性については可能な子であれば理論的なところも学習し、それが難しい子は調子記号がついた場合とつかない場合はどんな風に違って聴こえるのかを実際に音に出して弾いてあげて、耳で覚えるだけでもいいと思います。
また、調子記号になれるまでは調子記号のつく音符を他の音符よりも目立つように少し黒めに書いてあげたり、必要に応じて色をつけてあげるなどして工夫しています。

 

ロ長調からフラット系の変ト長調まで

残りの7つの音階はすべて指使いが変わってきます。
ここでは少し複雑になりますが、初めにやったハ長調と同じように指使いを一緒に考えながらゆっくりと時間をかけて一つずつ弾けるようにしていきます。
この段階の音階練習は、白鍵と黒鍵の組み合わせによって指使いが様々に変わるので指使いの工夫がとても大切だということを覚えていきます。

こうして長音階12個が弾けるようになったら次は短音階の練習へと進みます。

 

短音階

短音階は長音階のように1種類ではなく、一つの調に3種類の音階が存在します。

・自然的短音階
・和声的短音階
・旋律的短音階

の順番に、まずは自然的短音階の練習をします。

この頃には、長音階でやった指使いの大切さはだいぶ分かってきていますが、それでも手を抜かず長音階の時と同じように指使いを一緒に考え、ノートに書き込みながら進めていきます。

自然的短音階が弾けるようになったら、次の和声的短音階は自然的短音階からどのように変化するのか約束事を書きながら進めていきます。
1週間たって次のレッスンの時に和声的短音階が理解できていれば、旋律的短音階の説明をします。
さらに1週間後、旋律的短音階が弾けるようになったら、3種類の音階を続けて弾けるように練習します。

短音階は一つの音階をレッスンするごとにその音階にはどんな約束事があったのかを必ず確認しながら課題を出すようにします。
そうすることで短音階の練習も終わりの方にさしかかってくると、子どもにとっては面倒だと思われる3種類の音階の約束事をきちんと覚えてしまいます。

短音階は特に楽譜に並んだ音を見ながらただ漠然と弾くよりも、約束事を理解した上でさらった方が断然早く弾けるようになります。

そして4段のノートの1段目には自然的短音階、2段目に和声的短音階、3段目に旋律的短音階が出来上がり、空いている4段目には平行調の説明と復習を兼ねてその平行調をもう一度書くようにします。
そうすると4段ノートの1ページに短音階3種類とその平行調の長音階が出来上がります。
これをイ短調からスタートし、調子記号のつく順番に最後の変ホ短調まで進めていきます。
こうして4段のノート12ページに長音階と短音音階が完成します。

 

進め方はその子のペースに合わせて焦らずに長い期間設定で覚える

では長音階12個、短音階12個全24個の調をどのくらいの期間でマスターするかというと、これは生徒さんによって様々です。

レッスンするのは音階の練習の他にも教則本や自由曲などたくさんありますので、音階のレッスンだけにそんなに時間をかけることもできません。
一番初めのハ長調は時間をかけますが、慣れてきたら音階練習にかけるレッスンの時間は毎回5分から長くても10分程度です。

前回のレッスンで覚えた調が弾けていたら、新しい調を一つ。
短音階も3種類を一気にやるのではなく、1種類ずつやるようにします。
そうすると長音階12個、短音階3種類×12個で全部で48個になります。
年間のレッスン回数にもよりますが、48個の音階を1回のレッスンで一つずつ覚えていった場合、約1年ちょっとでマスターできることになります。

でもこれは本当に毎週一つずつ覚えていった場合なので、もう少しかかるかもしれません。
逆に1週間で2つ、3つ、4つとこなすことができる子にはどんどん課題を出していいと思います。
いつまでに覚えなければいけないということもありませんので、その子のペースで進んでいけばいいのだと思います。

一気にマスターしようとするととても億劫ですが、1回のレッスンで一つずつ覚えるようにしていけば頭の中で混乱することもあまりなく、正しくマスターしていけると思います。
この方法で大抵の生徒さんは長音階、短音階をマスターしていきました。

 

全ての長音階、短音階をマスターしたら

早い子は1年もかからずにマスターしてしまう子もいますが、大抵の子は1年くらいをかけてすべての音階をマスターします。

まずは「長音階12個、短音階12個全部で24個の音階、ここまでよくがんばったね!」と言うと、生徒さんはとても嬉しそうです。
音階の課題を出す時にノートに必ず日付も書き込むので、初めて音階の練習に入った時の日付を一緒に振り返って見ると、さらにその月日の長さを実感して少しずつコツコツと努力することの大切さも同時に覚えたように思います。

そして「さぁ!ここからがまた勉強だよ」と私が言うと生徒さんは「えっっ???」という顔になり、「うそでしょ~?こんなに長い間がんばったのに、まだ何かあるの~?」と言いたそうです。

そうなんです。
次回は音階練習のそれからの活用法や、音階練習がピアノの練習にもたらすメリットなどをお話したいと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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