大人のピアノレッスン ~Tさんのお話し~

こんにちは♪

以前、大人のピアノレッスンのあり方についてのお話をしました。
どんなことにでも言えることだと思いますが、理想を語るのはとっても簡単なこと。
でも、それを実践していくというのはなかなか大変なものですね。

私もブログを書いていたり、レッスンで生徒さんにアドバイスをしている時など「あ~私も気をつけないと・・・」とか思うことがよくあります^^;
”先生” といっても完璧ではありません。
生徒さんと一緒に成長していかなければと思う毎日です。

今日は私の教室に通ってくださっているTさんのお話をしたいと思います。

 

何かを始めようとする時、”大好き” である気持ちがあればいくつからでも挑戦できる!

Tさん。
Tさんとはもう長いお付き合いになります。
Tさんは高校生までピアノを習っていたのですが辞めてしまい、大人になるまでそれがずっと心残りだったそうです。

そして、やっぱりもう一度ピアノが弾けるようになりたいと思い、私のピアノ教室にお問い合わせをいただいたのが今から10年ほど前になります。

「やっぱりどうしてももう一度弾きたくて、でも今からだなんて遅くはないでしょうか。」

不安な気持ちはありつつも、それよりも ”ピアノが大好き” という気持ちが伝わってくるTさんからのお問い合わせの話の内容は今でも鮮明に覚えています。

「遅いだなんて、そんなことは決してないですよ。ピアノに限らずどんなことでも何かを始めるのに早いとか遅いとかないと思います。一緒にがんばっていきましょう!」

この言葉に少し安心をされたようでした。

 

長いブランクの後から始めるピアノの練習。何から始める?

「バイエル教則本は全て終了しています。でも、今となってはバイエルも全然弾けない状態だと思います・・・」
と、またまた不安そうに語るTさん。

あ、そうそう年齢のお話なのですが。
私は今48歳です。
当時は今から10年前になるので、私は38歳。若い~(関係ないことですね。笑)
Tさんは私よりも3つ年上の方なので、当時41歳ということになります。

高校生の時から41歳までって、かなりのブランクですよね。
そんなブランクを経て誰でも指は動かないのは当然ですし、高校生の時のように急に弾けるようにはなりません。

「まずは指を少しずつ動かすことから始めましょう。そして、教則本を始めてみましょう。」
ということで、ハノンピアノ教則本(以下ハノン)とツェルニー100番練習曲の二つを提案しました。

 

一から始めるつもりで・・・

ピアノの練習がハノンとツェルニー100番練習曲の二つ・・・
ピアノを習っている方、また習ったことのある方はこの二つの教則本をご存じだとは思いますが、この二つの教則本、全然楽しくありません(笑)。

ピアノを教える立場の私がそんなことを言っていてはいけないですね。
「全然楽しくありません」というのはちょっと語弊があったかな。
ハノンもツェルニーもとことん追求していくと新しい発見があったり、テクニックの良い勉強になります。
ただ、”ピアノを気楽に楽しみたい” という観点からするとこの二つの教則本は「全然楽しくない」のです。

そんなことをTさんにお話しすると・・・
「弾いてみたい曲はたくさんあります。でも一から始めるつもりでいるので構わないです。」

なんと前向きな!

 

焦らずに自分のペースで、一つ一つを丁寧に。

こうしてTさんと私のピアノのレッスンが始まりました。
ハノンは一定のパターンで上っていき、一定のパターンで下りてくるというもの。
パターンさえ覚えてしまえばすぐに弾けてしまいますが、使う指によって音量にばらつきが出たり、使う指によって余計な力が入ってしまい、どこの箇所も均一に聴こえるように弾くことはとても難しいです。

自分の指の感覚と聴こえてくる音量に注意しながら、それができるテンポでゆっくりとさらうことから始めます。
そして、ハノンは次々とすぐに進んでいくのではなくて一つ一つを丁寧に練習し、どの指が動かしにくいのか、どんな動きになると力が入ってしまうのか、またテンポをだんだんと速めていくと何がどんな風に違ってくるのかなど、自分の指や体とじっくりと向かい合いながら弾き込んでいくことが大切なことだと思います。

Tさんはそんな練習に退屈することなく、2か月くらいじっくりとハノンの1番を練習し続けていたと思います。
しかも、レッスンで聞くたびに改善されているところがあり、Tさん自身もだんだん指が動かしやすくなるのを感じるようになっていきました。

ツェルニー100番練習曲も、Tさんのペースで進めていくスタイルに。
私は、”練習曲” という名前のついているものは、”練習のための曲” ではなく、”練習しないと弾けるようにならないもの” という風に思っています。

練習曲にはそれぞれの曲にいろんなテクニックを必要とする箇所が出てきます。
人によって得意なテクニック、苦手なテクニックがあり、この苦手なテクニックが出てくる箇所を根気よくさらうことの積み重ねでピアノはだんだん上達していくものであって、練習曲はざっと早く終わらせるのが目的ではなく、苦手なテクニックを一つずつ丁寧に克服していくことが大切なことだと思います。

ちなみに、ざっと早く終わらせるような進み方をした場合に待ち受けているのは・・・
大きな大きな壁です。
そして、ある日を境に練習が苦痛になってしまうのです。
当然のことですが、これは年齢問わずピアノを練習している人すべてに当てはまることだと思います。

 

丁寧に根気よく練習を続けてきた今。

ハノンは弾けるようになったら終わりなのではなく、じっくりと時間をかけることがとても重要だと思います。
前述したように、いつも自分の指をよく観察しながら練習すること。

Tさんは「どうしてこうなるんだろう」とか「こうすると、こうなってしまう」などレッスンではいつも最低一つは自身で感じる疑問点をおっしゃっています。
疑問がわいてくるということは、それだけいつも自分の指を観察しながら練習されているということですね。

そのたびに私と2人、解決策を考えながら少しづつ克服してきました。

ハノンは全曲ではなく、1番から30番までをレッスンのたびに1曲づつ、30番までいったらまた1番から。
今度は前回よりも早いテンポで30番まで、また1番から30番まで・・・
と、1番から30番までを3回ほどやったと思います。

そして3回目を弾く頃には音のつぶもそろいだし、手の形も安定してきて、指はかなり動きやすい状態にまでなっていきました。
そして、今ハノンは音階と音階のアルペジオの練習に励んでおられます。

ツェルニー100番練習曲もすべて終わり、ツェルニー30番練習曲になり、それも半分くらいまで進んでいます。
ツェルニー30番練習曲は100番練習曲よりも難しくなりますが、100番練習曲を丁寧に練習されていたので、その延長のような感じであまり苦戦することなく進んでこられました。

それでも苦手なテクニックなどが出てきたりした時には根気よく、弾けるようになるまで努力されることを惜しまずがんばっておられます。

 

レパートリーも増えました

ハノンとツェルニーの二つのみをじっくり練習されながら少し指の動きに慣れてきたのは半年ほど経った頃でしょうか。
その頃から好きな曲を一曲ずつ仕上げていくというスタイルに。
始めのうちはあまり長くなく易しいものから始めて、レパートリーもどんどん増えていき、ここ何年かではショパンのワルツやノクターン、ドビュッシーの月の光など難しい曲にも取り組んでおられ、毎年発表会にも参加されるまでになりました。
今は今度夏に開催される発表会に向けて、新しい曲の練習に入りました。
またTさんのペースでコツコツと新しい1曲が仕上がっていくのがとても楽しみです。

 

ピアノに対する考え方を考えてみる

大人のレッスンのあり方についてお話ししたところでも書いていますが、せっかく始めたピアノのレッスンを辞めてしまうのは本当に残念で仕方がありません。

辞めてしまう理由については様々だと思いますが、今までレッスンしてきた大人の方が辞められてしまった理由の大半は以下のような理由が多かったように思います。

  • 思うように時間がとれなくて練習ができずピアノから遠のいてしまう。
    結果、レッスンに通いづらくなってしまう。
  • 自分なりに練習しているのになかなか理想に近づくことができない。

大人の方は ”きちんとできていないと” と強く思ってしまうようです。
さらには、”弾けていないと先生に申し訳ない” とまで思ってしまう方も少なくありません。
教える側の私も同じ大人。
練習時間を確保することの大変さはとてもよく分かります。
よく分かっている上でのレッスンであることはこちらからもお伝えしているのに、どうしてもそのように思ってしまうようです。

”自分なりに練習しているのになかなか理想に近づくことができない”
これはTさんのように子どもの頃にピアノを習った経験がある方で、小さい頃に辞めてしまったというよりも、高校や大学のようにある程度の年齢までやっていた方はこのように思われるようです。

大人になっても、高校や大学の頃に弾いていたピアノの記憶というものは鮮明に覚えているものです。
大人になってからその時のことを思って、ピアノに向かうと今現在の自分とのギャップにショックを受けてしまうのだと思います。
私も3年ほどピアノから離れていたことがあって、再度ピアノに向った時にはかなりのショックを受けました。

学生の時と違い、大人は自分の時間を作るということが難しいです。
まして、毎日のようにとなればこれは本当に本当に難しいこと。
ピアノは1日、2日弾かないだけで弾けていたところが弾けなくなってしまったりということがあるくらいなので、何年も弾いていなければ弾けなくなってしまうのは当然のことです。

Tさんはそういったこと全てを受け入れているように感じます。
Tさんはフルタイムでお仕事をされています。
それにプラス家での家事。
年齢的に体が思うようにならないときもあると思います。
学生の頃はもっと弾けていたのに・・・と、はがゆく思うこともあることでしょう。

でもそれらをネガティブに捉えてしまうのではなく、今の自分としてそれをすべて受け入れる。
そして、今の自分以上に頑張りすぎないということ。
ネガティブに思ってしまうようなことをいちいち気にしないで、ご自分のペースでがんばっておられます。
だから「家での練習が楽しくて、練習は私の心落ち着く貴重な時間です。」と、おっしゃっています。
結果、それが確実に少しずつですが実を結んでいっています。

 

大人のピアノのレッスン。
ピアノに対する考え方をもう一度考えてみる。
弾けるようになるまでの期限があるわけでもありません。
練習できない日が続いたっていいじゃないですか。
どんな時も自分を責めるようなことはしないで。
もっと長い目で見て、もっと肩の力を抜いて、もっと気楽に・・・
そう考えたら大好きなピアノをこれから先の ”人生の友” として楽しんでいけるのではないでしょうか。

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