戦士のおどり ~カバレフスキー こどものためのピアノ小品集~

こんにちは♪

第27回 グレンツェンピアノコンクール 地区大会、中学Bコースの課題曲になっている ”戦士のおどり。
気が付いたことや感じたこと、練習するときに気をつけたいことなどをまとめてみました。

戦士のおどり

ヘ短調 4分の4拍子
Allegro energico(速く 力強い 精力的な)

勇敢で力強い ”戦士” のおどりです。
”energico” と、楽譜に指示があるように、力強くてエネルギッシュな感じが表現できるといいですね。

作曲者であるカバレフスキーについては ”12月生まれの音楽家” でも書いていますので、お時間があればそちらもご覧ください。

アーティキュレーションを正確にとり、フレーズ感をもって弾くということはとても大切なことです。
アーティキュレーションとフレーズについては中学Aコース課題曲 ”50.Allegro vivo ツェルニー100番練習曲 Op.139” で書いていますので、参考にしてみてください。

 

頻繁に出てくる音形

拍感をもってAllegroのテンポにのり、適度な軽快さの中にも力強さがあり・・・
こんな風に曲が仕上がっていくといいなぁと思います。

譜面を見てみると、2つの16分音符と1つの8分音符がスラーでつながっているものが多く見られ、音は違っていても音形がすべて同じです。(24小節目、左手のみ下降形)
そして4分の4拍子である1拍目の裏拍、3拍目の裏拍のどちらかに出てきています。

この頻繁に出てくる3つの音をどのように弾いたらよいでしょうか。
それによって、曲全体の雰囲気が変わってくると思います。

やってしまいがちなのは、スラーのかかっている一番初めの16分音符にのってしまうことです。
試しにこのように弾いていただくと分かりやすいと思うのですが、どうでしょうか。
一番初めの16分音符の音にのってしまうと、当然その音が強くなり、もっとオーバーに言うとアクセントがついているかのようになってしまうと拍感が損なわれ、曲全体がとても重たい印象になってしまうだけでなく、Allegroであるテンポにのって弾くことすら困難になると思います。

スラーでつながれた2つの16分音符と1つの8分音符。
16分音符は余分な力を入れないように、次にある8分音符に向うように。
ただしこの8分音符は拍感を感じる強拍の部分ではないので、極端に大きくしてしまうとバランスが良くないのでほどほどに。

それから16分音符はリズムが崩れやすいです。
8分音符に向かうことだけを優先してしまうと、リズムが崩れて前のめりになったような印象になってしまうので気をつけたいところです。

1小節目と2小節目で1つのフレーズになっています。
2小節にわたってララシドラソファミレドシラとなっているメロディを一息に弾くのですが、一番初めのラの音から始まり、ララシドで1つ、ラソファミレドシラで1つという風に2つのグループを感じて一息に弾くようにするとまとまりやすいと思います。
2つ目のラソファミレドシラの始めの ”ラ” の音は裏拍なので重たくならないように気をつけて、ラから次のソヘ向かうようにします。

また、ここのラソファミレドシラは、ノン レガートにすると引き締まった感じがします。
どのくらいのノン レガートにするかは、いろいろなパターンを試してみるのがいいですね。
まず、楽譜にスタッカートの指示がないので、スタッカートのようにはねてしまわず、音の進みが停滞してしまわないように、動きを感じられるようにノンレガートが表現できるといいですね。

”スラーでつながれた2つの16分音符と1つの8分音符” は、曲の初めから終わりまでこの音形が大半を占めているので、この部分だけを取り出して右手も左手も同じように弾けるように何度も繰り返し練習するだけで曲の雰囲気がかなり良くなると思います。

 

テンポのこと

Allego は ”速く” です
この曲に限らずですが、 ”速く” というと1つ1つの音を ”速く” と認識してしまう子が多いように思います。

例えばこの曲の場合4分の4拍子で、4分音符を1拍として1小節が4拍ずつ進んでいきます。
テンポは1つ1つの音を基準にするのではなく、”この4拍ずつがどれくらいのテンポで進んでくのか” ということを基準にします。

なので、基準となる4分音符1拍に対して同じ長さの4分音符が1つずつのって進んでいくのと、2つで1拍になる8分音符、4つで1拍になる16分音がのって進んでいくのとでは感じ方がそれぞれ違ってきます。

これをすべて音符1つ1つで捉えるとものすごく速く感じてしまいますが、例えば8分音符であれば2つ、16分音符であれば4つを1つとして捉え、まとまって弾くように意識するようにします。

1つ1つの音を速く弾くのと、まとまった音を1拍として捉えるのとでは、同じテンポで弾いていても ”速さの感覚が” 全然違ってくると思います。

 

テンポの設定

前述した ”テンポのこと” を踏まえた上で・・・

では、この曲をどのくらいのテンポで演奏したらいいのでしょうか。

少し話がそれますがコンクールや発表会などで、Allegro の曲をこれでもかというくらいに速いテンポで弾いているのを耳にすることがあります。

確かにAllegroは ”速く” です。
でも、曲の雰囲気だったり強弱だったり何も感じるところがなく急いでいるようにしか聴こえないような演奏の場合、これは先ほどもお話ししましたが拍感をあまり(というか、ほとんど)意識せず、Allegroだからとにかく1つ1つの音を速くという認識のもとで弾いているのが原因だと思います。

とても速いテンポなのに落ち着いて聴いていられる演奏と、急いでいるようにしか聴こえない演奏の違いは拍にのって捉えられているかどうか。
その他にもフレーズ感や、指を速く動かす練習だったりは必要になってきますが・・・

この曲をどのくらいのテンポで演奏したらよいのか。
何も考えずにただ速いテンポで弾くのではなく、まずは4分音符を1拍として4拍ずつ進んでいく4拍子を感じながら弾いてみることです。
そして、その4拍子にきちんとのって弾くことができるテンポから練習し、自分が理想とするAllegroのテンポまで上げていけばいいのです。

練習では、その他にもいろいろなことに気をつけなければなりません。
速い曲の場合、とにかく速く弾くことだけに集中してしまいその他のことに注意が向かないことが多いです。

正しいアーティキュレーションやフレージング。
メロディーと伴奏の音量のバランス、それに伴う音色の工夫や強弱など。
それらに集中できないくらいにテンポを優先的に速めるということは、せっかく練習していても練習の時間を無駄にしてしまっているような気さえします。

テンポ設定は一番最後の課題として、まずは楽譜に書かれていることを表現してみる。
4拍子の拍を常に感じながら、それを繰り返し繰り返し練習している間に指も鍵盤にだんだんなじんできて自然とテンポも上がってくると思います。

テンポがだんだんと上がってきたら、メトロノームを使っての練習もお勧めです。
メトロノームを使っての練習は、自分では一定のテンポで弾いているつもりでも無意識に急いでしまっていたり、逆に無意識に遅れてしまっているところを見つけることができます。

 

19小節目から22小節目

19小節目から22小節目は弾きにくいなぁと思っている子が多いのではないかと思います。
でも、丁寧に楽譜を見てさらえばそんなに難しくはありません。

右手は2声になっています。
まず、メロディーである一番上の音だけを弾いてみます。
その時に気をつけるのがアーティキュレーションと正しい音の長さ、休符をよく感じることです。

  • 18小節目は4拍目の裏拍のアウフタクトで始まりますが、この音はスタッカートです。
  • 19小節目1拍目の表拍の音は同じようにスタッカートにはしません。
  • 19小節目1拍目の裏拍から2拍目の表拍にむかってスラーでつないだら、その後の2拍目の裏拍の音へはつなぎません。
    そしてさらに3拍目の表拍へもつなぎません。
  • 19小節目の3拍目の音は8分音符です。
    長くなってしまいがちになるので、その後の8分休符を十分に感じるようにします。
  • そして19小節目、4拍目の裏拍のアウフタクトでまた始まりますが、この音は18小節目の時と違い、スタッカートにはしません。
    同じく、20小節目、21小節目の4拍目の裏拍のアウフタクトもスタッカートにはしません。

いかがでしょうか。
とても細かく書いてしまいましたが、これは大切なことだと思います。
もう一度アーティキュレーションと正しい音の長さ、休符を感じることに重点を置いてメロディーだけをさらってみて、見落としてしまっていたところやできていなかったところは改善し、その通りにメロディーが弾けるようになるまで覚えなおすことです。

メロディーの下に添えられている下の音も同じようにさらってみます。
19小節目、1拍目裏拍から3拍目表拍にかけてはスラーがついていますね。
スラーが切れてしまわないように、2つの音のつながりをよく聴くことが大切です。

そして、2つ目の音は少し音量を下げるようにするとバランスがいいと思います。
この2つ目の音も右手の時と同様、長さを正しくその後の休符をよく感じることが大切です。

メロディーの音、メロディーに添えられた下の音それぞれ正しく弾けるようになったら、今度はそれを合わせてみます。
ポイントは、縦と横それぞれを注意深く聴くことです。

縦とは、メロディーの音とその下の音の音量のバランスです。
メロディーがよく聴こえ、それを越えることなく、でも小さすぎず下の音がバランスよく添えられるように。

横とは、先ほど分けて弾いたメロディーとその下の音を一緒に弾いた時にそれぞれが正しいアーティキュレーション、音の長さ、休符をよく感じて弾けているかということです。
それぞれを分けて弾いた時には弾けていても、同時に弾いた時にこれが崩れてしまわないように、横の流れをそれぞれよく聴きながらさらうことが大切です。

左手は18小節目の2拍目ファの音が22小節目までの長いタイになっています。
こんなに長い間タイで1つの音を伸ばし続けると、音はだんだん減っていき最後には聞こえなくなってしまいますが、その様をよく聴き続けることは大切なことです。

そして18小節目の4拍目の左手、ファの音。
この音にもたれてしまうように大きく弾いてしまうと、不自然な感じに聴こえてしまいます。
この音は、17小節からのメロディーの伴奏としての終わりと捉えて、音量を下げる方がいいと思います。

19小節目からは1拍目を感じて、2拍目で少し音量を下げたら3拍目と4拍目は本当に軽いタッチで。
ここはとても低い音域の音なので、音がよく響きます。
うっかり響きすぎて、目立ちすぎないように気をつけたいところですね。

それからこの19小節目の3拍目と4拍目の8分音符は、簡単なようで意外と弾きにくかったりします。
例えばリズムが崩れてしまったり、でこぼこしているように聴こえてしまったり。

この場合、ファの音を弾く時に手の形が5の指の方に傾き、5の指にもたれてしまっていることがほとんどだと思います。
ドの音を2の指で弾く時も、ファの音を5の指で弾く時も手の形を変えないようにして、太さも長さも指の強さも全く違うこの2つの指の力を均一にするようなイメージで、聴こえてくる音をよく聴きながらバランスをとっていくように。

そして、余分な力を入れないように注意しながら何度も練習していくと音のつぶやリズムがそろってくると思います。

24小節目から最後の26小節目にかけて。
24小節目の右手に sf がついています。

sf とは、 ”突然強いアクセントをつけて” という意味です。
だからといって、思い切り大きくアクセントをつけるのではなく、強弱記号を意識したふさわしい音量での sf にするのが好ましいと思います。

18小節目4拍目裏拍からの p がずっと続いてきている中で sf をどの程度の音量で弾いたらいいのか、いろいろ試してみるといいですね。
聴き手がビックリとするくらいの音量は避けた方がいいと思います。
通常のアクセントよりも、もう少しインパクトのあるような感じに。

そしてこの音はタイで長く伸ばすので、最後まで音量が減っていくのを聴き続けて。
だんだんと音量が減ってきた先に、音量が飛び出ることなくバランスよく最後の26小節目の1拍目の音が入ると自然でいいですね。
また、この一番最後の右手の音は8分音符の長さをもって終わるのに対して、左手はスタッカートになっています。
この微妙なバランスでの終わり方も見逃さないように、きちんと表現したいですね。

19小節目から22小節目に焦点を当ててお話をしてきましたが、縦と横を注意深く聴くということは、そのほかの箇所でも同じです。

強弱記号は f の他にも p が出てきます。
p は弱く弾きますが、この曲では弱くてもエネルギッシュさを感じるような p が表現できるといいですね。

 

さいごに・・・

ピアノの演奏の解釈は様々なので、ここに書いたのはあくまでも私自身が感じたこととして受け止めていただきたいと思います。

たくさんのことを書いてしまいましたが、どれだけのことができるか。
これにはかなりの個人差があります。

教える側からしたらあれもこれもとたくさんのことを要求してしまいがちなのですが、そうではなく生徒さんのペースに合わせてできることから少しずつ進めていくこと、そしてここに書いたこと全てができたら良くて、そうでなければ良くないということではなく、一つのことができるようになったことに対して認めてあげること。
その過程を大切にして、レッスンをしていきたいと思っています。

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