波止場で ~リラ・フレッチャー ピアノコース ブック 3 ~

こんにちは♪

第27回 グレンツェンピアノコンクール 地区大会、小学1・2年Bコースの課題曲になっている ”波止場で” 。
気が付いたことや感じたこと、練習するときに気をつけたいことなどをまとめてみました。

 

波止場で

ハ長調、4分の4拍子、Allegretto(アレグレット:アレグロより少しおそめに)

A(1小節目~8小節目)
1小節目~4小節目 → a
5小節目~8小節目 → a’

B(9小節目~16小節目)
9小節目~12小節目 → b
13小節目~16小節目 → b’

曲全体を大まかに捉えると、Aは右手がメロディ、Bは左手がメロディ。
伴奏はAは単音で動きが感じられるのに対して、BはⅠとⅤ7の三和音。

 

フレーズを感じてよく歌うこと

もしこの曲のメロディーを歌うとしたらどのようにフレーズをとったらいいでしょうか。

歌を歌う時にブレス(息継ぎ)なしで歌う事は不可能です。
でもピアノは指だけで音と音をつないでいけばいいのですから、ブレスをしないでずっと弾き続けることは可能です。
でもそれでは何も感じることのない、ただただ音が鳴っているだけの演奏になってしまいます。

もし歌を歌うとしたらどこでブレスをとって歌ったらいいか。
それが ”フレーズ感”

一まとまりのフレーズをどのように演奏したら自然な流れできれいに聴こえるか。
それが ”よく歌うこと”

この二つはとても大切なことだと思います。

 

曲にふさわしいテンポを決めること

そしてもう一つ大切なのがテンポ。
せっかくフレーズ感やよく歌うことを練習しても、それが適切なテンポでなかったらとっても残念です。

テンポの指定にAllegrettoと書いてあります。
練習をたくさん積んできて指がよく動くようになってくると、このことをついつい忘れてしまいがちになるので、テンポの設定は気をつけたいところです。

Allegrettoのとらえ方は難しいと思いますが、演奏していて”速い” と感じるのであればそれはAllegrettoではないと思います。
また、ゆったりと聴こえてしまうのもこの曲には合っていないですね。

同じAllegrettoと書いてあっても、演奏する曲によってそのテンポは微妙に違ってきます。
速すぎることなく、適度な速さの軽快な4拍子に聴こえるように、どれくらいのテンポで演奏したらこの曲に一番ふさわしいかをいろいろなテンポで試してみるのも良い勉強になりますね。

また、楽譜には挿絵がついています。
中央に座っている男の人が持っている楽器。
これはバンジョーでしょうか。
男の人が演奏する音楽に合わせて踊っている女の人や、音楽に合わせて手拍子をしている男の人もいて、とても楽しそうですね。
この挿絵からもどのようなテンポで演奏したらよいのかというヒントを得られそうですね。

 

手や指の使い方を明確にしておくこと

この曲は右手も左手もメロディーの音域が6度なので、ドレミファソのポジションにずっと手を置いたまま弾くことができません。
でも、基本のポジションは右手も左手もドレミファソです。

なんだか矛盾したような表現になってしまいましたが、言い方を変えると基本のポジションがドレミファソで、”基本のポジションのまま弾くことのできるフレーズ” 、”基本のポジションから指を開かないといけない箇所があるフレーズ” というふうに捉え、フレーズごとに指の使い方の違いをきちんと把握しておくとフレーズをよく歌うことに集中でき、ミスタッチにもつながりにくいように思います。

例えば、aの1小節目、2小節目のフレーズを演奏するときには、手のポジションは基本のドレミファソに手を置いて弾き始めます。
2小節目の2拍目のファの音までは手はそのままのポジションで弾くことができますが、3拍目のシの音で1の指を少しだけ開いて弾くように気をつけます。
このとき2の指と4の指はレとファのところから移動することがないようにします。

ここで注意したいのが、移動することがないようにと言っても、手首や腕を固めてしまうことがないようにということです。
また、手が小さい子の場合は柔らかく保った手首の動きをつけると上手くいくと思います。
その時の手首の動きは必要最小限にとどめるようにすることも注意したい点です。

aの1小節目、2小節目のフレーズをこのように気をつけることで、次に出てくる3小節目、4小節目のフレーズにきれいに移ることができると思います。

5小節目はドレミファソのポジションのまま弾くことができ、6小節目にはレミファソラへ手をポジション移動します。
6小節目に入ったら、7小節目もそのままレミファソラのポジションで弾くことができますが、8小節目のドの音に入るときには1の指を少しだけ開いてドの音を弾くようにします。

そして、右手は9小節目から伴奏に変わり、ポジションはドレミファソに戻りドミソの和音を弾くので、8小節目のドの音を伸ばしている間に、次のドミソの和音がスムーズに弾くことができるようドレミファソのポジションに手を準備しておきます。

このようにして、9小節目から始まる左手のメロディーも手のポジションのことを明確にしてさらうようにします。

伴奏に関しては、Aはずっとドレミファソのポジションのまま弾くことができます。
BはⅠはドレミファソのポジション、V7はドレミファソのポジションのまま1の指を少しだけ開いてシファソの和音を弾くようにします。
そうすることによってⅠからⅤ7、Ⅴ7からⅠに移るときにスムーズになると思います。

 

表現したいように自由に動く手と指

レッスンで「ここはもっと強く」とか「ここのテンポはもう少し速めに」など、新しいことをこちらが要求した場合に、さっきまでとても良く弾けていたのにとたんに弾けなくなってしまうことがあります。
また、曲の初めからであればすらすらと弾くことができるのに、曲の途中から弾こうとした場合、魔法にかかってしまったかのように弾き出すことができない・・・

これにはいろいろな原因が考えられると思うのですが、一つにはメロディの音をフレーズとして捉えておらず、また手のポジションや指の使い方(指使い)も考えられていないことが挙げられると思います。
分かりやすく言うと、一つ一つの音を行き当たりばったりで弾いてしまっているという事です。
その行き当たりばったりの弾き方でも、弾いている本人の中では無意識にバランスがとれていて弾けてしまうのです。

でも、こちらが先ほどのような何か新しい要求をした時に、そのバランスは崩れてしまい、とたんに弾けなくなってしまうのです。

このような行き当たりばったりの弾き方では、曲にふさわしい表現をすることには程遠くなってしまいます。
また、”ステージでの演奏” という環境が変わったことによりバランスを崩してしまい、曲の途中で止まってしまったりということにもなりかねません。

そうならないためには、前述したように ”フレーズをよく感じ、よく歌うこと” ”曲にふさわしいテンポ設定” ”手や指の使い方を明確にしておくこと” がとても重要になってきます。

そして、”手や指の使い方を明確にしておくこと” については、明確にした後、今度は鍵盤を見ないで手や指の動きを感覚で覚えるようにします。

これは ”鍵盤を見ないでも手や指が感覚で動けるようにする練習” と言う意味で、実際に演奏するときには鍵盤を見て弾いてもいいです。

どんなフレーズでも迷うことなく ”自由に動く手と指” にすることによって、自分が理想とするどんな表現も可能になってくると思います。

 

その他の練習

この曲はAは右手でメロディー、左手で伴奏、Bは左手でメロディー、右手で伴奏という形になっています。
言うまでもないことですが、メロディーよりも伴奏の音量が極端に大きくなってしまうのはバランスがとても良くない状態です。
このことに気をつけながらAからBに移る際には、右手と左手の役割がスムーズに変わることができるように意識し、それが明確に表現されることが大切です。

前述したように ”自由に動く手と指” を目指しながら練習していくと始めは上手くいかなくても、だんだんスムーズにAからBへと移ることができるようになってくると思います。

そしてもう一つ。
Aで奏でる右手のメロディー、Bで奏でる左手のメロディー、どちらも同じようになめらかに聴こえるようにということです。

左手で弾くメロディーはどうしても弾きにくい場合があります。
そうしたことがないように、Bの左手は動きやすくなるまでよく練習すること。
そして曲を通して弾いた時に、AのメロディーとBのメロディーを常に聴き比べることも大切です。

 

こうした細かい練習は、すぐにできるようにならないことがほとんどです。
それを「私には無理なのかな・・・」と、勘違いして落ち込んでしまう子もいます。

なので生徒さんには「すぐにできるようになる子はいないよ。少しずつでいいから練習を続けていけば絶対にできるようになるよ!」と、声掛けするようにしています。
そして、まだまだほど遠い状態であっても、前回のレッスンよりも少しでもできるようになったことは見逃さないよう、褒めてあげるようにしています。

”できるようになる” という励ましの言葉によって練習へのモチベーションが上がり、曲が仕上がった時には、”できた!” という喜びと共に ”こつこつと積み重ねることの大切さ” も実感し、身につけていくのだと思います。

 

さいごに・・・

ピアノの演奏の解釈は様々なので、ここに書いたのはあくまでも私自身が感じたこととして受け止めていただきたいと思います。

たくさんのことを書いてしまいましたが、どれだけのことができるか。
これにはかなりの個人差があります。

教える側からしたらあれもこれもとたくさんのことを要求してしまいがちなのですが、そうではなく生徒さんのペースに合わせてできることから少しずつ進めていくこと、そしてここに書いたこと全てができたら良くて、そうでなければ良くないということではなく、一つのことができるようになったことに対して認めてあげること。
その過程を大切にして、レッスンをしていきたいと思っています。

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