Little Suite in F 2.The Great Hall ~ギロック 発表会のための小品集~

こんにちは♪

第27回 グレンツェンピアノコンクール 地区大会、小学3・4年Bコースの課題曲になっている ”Little Suite in F 2.The Great Hall ” 。
気が付いたことや感じたこと、練習するときに気をつけたいことなどをまとめてみました。

 

Little Suite in F 2.The Great Hall
(小組曲 へ長調 第2曲 大宮殿)

へ長調、4分の4拍子、
On a festive occasion, happily「祝祭の行われている(大宮殿)、みち足りた気分で」

A(1小節目~8小節目)
1小節目~4小節目 → a
5小節目~8小節目 → b

B(9小節目~16小節目)
9小節目~12小節目 → a’
13小節目~16小節目 → b’

rather broadly いっそう幅広く
retard だんだんゆっくり

大宮殿で、どんな祝祭が行われているのでしょう。
ちょっと想像してみました。
王様とお妃様との赤ちゃんが誕生したお祝い
王子様が成人されたお祝い
王子様がご婚約されたお祝い
王様のご長寿のお祝い

”祝祭”
みなさんはどんな祝祭を思い浮かべますか。

もう少し想像してみました。
王子様が隣の国のお姫様とめでたく婚約をされました。
宮殿には両家の親族、王室に関わる関係者たちがたくさん集まり盛大な婚約披露が行われました。
王様、お妃様をはじめ、誰もが二人の婚約を祝福しました。
そして王子様とお姫様は皆の前でダンスを踊りました。
勇敢で素敵な王子様と美しいお姫様。
とてもお似合いで幸せそうな二人のダンスに皆うっとり・・・

このように王子様とお姫様が登場する物語はたくさんありますね。
王子様が素敵だったり、お姫様が着ているドレスがきれいだったり、お城の中の綺麗な装飾品だったり、子どもにとって憧れというか、夢のある世界だと思います。

 

テンポ設定

気をつけなければならないことはたくさんありますが、一番初めにテンポ設定が大切だと思いました。
楽譜には ”2分音符=about88” のテンポの指示があります。
about88なので、88でなければならないということではなく、約88くらいのテンポでという解釈でいいと思いますが、私が実際に88のテンポで弾いてみた感想は「速かった」です。
あくまでも私が感じたことですが、もう少し落ち着いたテンポで弾いてもいいのかなと。

楽譜に指示されている”2分音符=about88” よりもはるかにかけ離れたゆっくり過ぎるテンポではいけないですが、正しい音や休符の長さ、細かなスラーやスタッカート、テヌート、フェルマータ、それから強弱記号、rather broadlyやretardなど、楽譜に記されていることを十分に表現することができなくなってしまうくらいに速いテンポを優先させるべきではないと思いました。

まずは正しく弾けるテンポで、楽譜に記されていることを十分に表現することを優先させること。
無理にテンポを上げようとせずに、毎日何回も何回も弾き込んでいくこと。
弾き込んでいくと指がだんだん鍵盤になじんできて、自分が理想とするテンポまで自然に上がっていくと思います。

 

数えながら弾く練習

再度テンポのお話しになりますが、自分はこの曲をどんなテンポで弾くのかということをきちんと明確にしてから曲を弾き出すことが大切です。
曲の出だしは4拍目から始まるアウフタクトです。
自分が演奏したいテンポを ”123” と心の中で唱えてから4拍目で弾き始める練習はお勧めです。

またこの曲は、曲の出だしだけでなく全てのフレーズがアウフタクトの出だしになっています。
なので、曲の出だしだけでなくどのフレーズからも弾き出すことができるように曲の途中から弾く練習をするのも良いと思います。

その時にも必ず心の中で ”123” と唱えてから弾き出すようにすることと、出だしの音は重たくならないように気をつけることが大切です。

 

スタッカート

1小節目、9小節目の右手にでてくるスタッカートはどのように表現したらいいでしょうか。
スタッカートは ”音を短く切って弾く” と言ったりしますが、曲の雰囲気によってスタッカートの表現も様々です。

a の右手のメロディーは ”ラソファ” ”ラシド” ”レミファ” が、3つの細かいアーティキュレーションになっていて、”ラソファ” は始めのラの音にアクセントがつかないように気をつけて mf で、その次の”ラシ” は ”ド” に少し向かって、その次の ”レミ” は大きく ”ファ”に向って。
というように自然なクレッシェンドをつけて、3つのアーティキュレーションをひとまとまりに奏したいところです。

なので、ここでのスタッカートは手を大きく上げてしまうと、その勢いですぐ次にくる音に余分なアクセントがついてしまったりして、3つのアーティキュレーションをひとまとまりに表現することが困難になると思います。
また、手の振りが大きいと軽快なテンポで弾くこともできないと思います。
スタッカートの時には手が鍵盤の近くにいるように、手の使い方も工夫したいところです。

このスタッカートを弾く時には左手の音もスタッカートになっていますが、どちらもスタッカートの長さはそろえて、そして私はあまりするどく短くはね過ぎない方が品のある感じがしてこの曲に合っているのかなと思いました。

 

休符をよく聴くこと

レッスンで「休符をよく聴いてね。」と私が言うと生徒さんは、「え?先生、休符って聴こえないよ?」と、不思議そうな顔をして言います。

「そうだよね、休符はお休みの記号だから何も聴こえないよね。その何も聴こえないのをよく聴くんだよ。」と私が言うと、始めのうちは分かったような分からないような感じで休符をとっていますが、何度もやっているうちに休符の大切さに気が付いていくようです。

この曲にも4分休符や8分休符が出てきますが、この休符をよく聴くことはとても大切なことです。
例えば2、3、4小節目の右手に出てくる8分休符。
これを正しく聴き取ることによって、裏拍から出るアウフタクトの3つのアーティキュレーションのグループを軽快に弾き出すことができます。

また2、3、4小節目の左手に出てくる8分休符。
これをよく聴いていないと直前の8分音符はだらっとしたしまりのない終わり方になってしまい、軽快なイメージが損なわれてしまいます。

難しいことかもしれませんが、休符を単に ”お休み” と捉えるのではなく、”音が鳴っていない状態をよく聴いて感じとる” と、捉え方を変えることによって、より高度な表現になっていくと思います。

 

テヌート

5、6、7小節目の右手にテヌートの記号が書いてあります。

テヌートとは?
”音を保持して。音符の表す長さを十分に保って演奏すること。”
と、辞書に書いてありました。

なので、
”テヌートの書いてある8分音符の音の長さは十分に聴くこと。”
・・・と、言われてもなんかしっくりとこないですよね。

十分に聴くようにするのですが、別の言い方をするのであれば、”テヌートの音から次の音に移るときに急がないように。”
どうでしょうか。
少しイメージがつきやすくなったと思います。

そして、テヌートの長さだけではなくテヌートがついた音と並行して横に動いている左手の音とのハーモニーもよく聴きながら弾けるといいですね。

テヌートの書かれた音の次の音は、テヌートの音よりも大きくなってしまいがちです。
テヌートの次の音が大きくなるとバランスが良くありません。
テヌートの音は全て1の指で弾くので、1の指に少しだけ重心をもってくるような感じに手を使うと上手く弾けると思います。
ただし、テヌートの音にアクセント記号が書いてあるわけではないので、テヌートの音がアクセントのように極度に目立ってしまわないように。

 

 フェルマータ

14小節目の3拍目の右手のドの音と、左手のラの音についている記号は ”フェルマータ” という記号で、臨時に拍の進行を停止させて、しばらくその音符の時間を延長させます。
簡単な言い方で ”その音を程よく伸ばす” とも言ったりしますが、子どもにはその言い方の方が伝わりやすいかもしれませんね。

ではどのくらい伸ばしたらいいかというと、演奏する曲によって、また演奏者によって様々です。
12小節目アウフタクトから始まるメロディの始まりから、14小節目のフェルマータのついている音に向けてクレッシェンドがついています。
14小節目は右手と左手が反進行の形をとり、クレッシェンドと共に ”rather broadly” (いっそう幅広く)を感じながらフェルマータのついた音に向います。

だんだんクレッシェンドしていき、いっそう幅広く感じた先のフェルマータ。
いろいろな長さのフェルマータを試してみて、この曲のこの部分にふさわしい長さを見つけられるといいですね。
これは演奏しながら聴くことも大切ですが、迷っているうちは演奏を録音してじっくり聴いてみた方がより分かりやすいと思います。

今ふと思ったのですが、フェルマータのついている音の前の ”ファソラシ” の所でゆっくりにしてしまいそうな子がいるかもしれません。
”ファソラシ” の部分はあくまでも ”rather broadly” 。
いっそう幅広く表現するだけなので、ここはテンポはしっかりと守っていくように注意するようにするといいですね。

 

最後の2小節

最後の2小節は、曲の大切な締めくくりです。
フェルマータのついた音を伸ばした後に3連符に入るのですが、この3連符への入り方は難しいと思います。

考えられるのは、
フェルマータで音を伸ばした後に休符のような空白があって、3連符に入ってしまう。
3連符の始まりの音が極端に大きくなり、フレーズの始まりがびっくりしたような出だしになってしまう。

これらは、どれも音楽の流れのバランスが良くないと思います。

一つ目の ”フェルマータで音を伸ばした後に休符のような空白があって、3連符に入ってしまう。”
これについては、指使いの問題もあると思います。
フェルマータの前の ”ファソラシ” の ”ファ” は1の指から始まるので、”ファソラシド” は、12345の指で弾くと思うのですが5の指でフェルマータのドの音を弾いた後、同じ5の指で3連符を弾き始めなければいけません。
この場合、フェルマータの音を5の指で弾いた直後に4の指に変えることによって解決されると思います。
ただし、5の指から4の指に変える時には決して押さえている鍵盤が浮くことがないように気をつけなければいけません。
浮いてしまうとドの音を2回弾いてしまうことになってしまいますから。

5の指から4の指に変えた後は、タイミングよくブレスをとって5の指から3連符に入ります。
この時のブレスは、手は高く上げないように、指は鍵盤に触ったまま鍵盤だけを上げてブレスをとるようなイメージです。
そして、3連符の音は重たくならず、強調することなくサラリとその次のラの音に向うようにすると、とても感じが良いと思います。

 

16分音符で書かれたミファミファはどう解釈するといいでしょうか。
私はこの音はメロディではなく装飾音符のような感じに弾くときれいだなぁと思いましたが、どうでしょうか。
ちょっと言葉では説明しずらいので・・・

赤い丸で囲った音が付点4分音符、8分音符、付点2分音符での ”ミーファファー” というメロディで、それ以外の音を装飾音符のようなイメージで捉えて弾いてみると、16分音符が重たくならずきれいでした。
ただし、楽譜に書いてあるリズムは絶対に崩さないように正確に。

16分音符のミファミファからテンポを緩めがちになると思うのですが、ここはテンポは緩めないようにした方がいいと思います。
リタルダンドは最後のファファーのところでテンポを少し緩める程度に。
そして最後の付点二分音符の長さも大切です。
”少し緩めた状態でのテンポで3拍分” きちんと伸ばして終わるように。

あまりテンポを緩めすぎるよりもシンプルにさらっと緩めて終わる方が、この曲には合っているような気がしました。

 

その他に気が付いたこと

1小節目~4小節目の a と、9小節目~12小節目の a’ はとても良く似ています。
クレッシェンドとデクレッシェンドの付き方は全く同じです。

何が違うのかと言えば、a の2小節目の ”ファミファソ” が、a’ の10小節目で ”ラソラレ” と、3度高く上がったところから始まるということです。

a と a’ とではクレッシェンドとデクレッシェンドの付き方は全く同じですが、これを同じようにしてしまうのではなく a’ のクレッシェンドは a の時よりも幅広くかけてみます。
そうすると、a の2小節目の ”ファミファソ” よりも、a’ の10小節目で ”ラソラレ” の方が音量が大きくなり、a と a’ のニュアンスの違いを表現できるように思いました。

そして、11小節目 ”ソファソド” の ”ド” の音をデクレッシェンドで下げたら、その ”ド” の音をよく聴き、その次の12小節目の ”ファミファ” は、前に弾いた ”ド” の音よりも大きく出ないこと。
”ファミファ” の音を大きく出てしまうと、クレッシェンドの幅を効かすことができず、前述した ”rather broadly” (いっそう幅広く)の表現が乏しくなってしまいます。

 

それから、7小節目の3拍目から8小節目の1拍目にかけての右手は、弾きにくいと悩んでいる子が多いだろうなぁと思います。
まず気をつけたいのが、ここはメロディーが2分音符の ”ミ” と付点2分音符の ”ファ” だということです。
また、付点2分音符のファの長さが短くなってしまわないように。
このメロディーの音をよく聴いて、その下に出てくる8分音符の音はメロディーよりも大きくならず、メロディーの音に寄り添うようなイメージで弾いてあげるように気をつけます。

そして、メロディーの ”ミ” の音も ”ファ” の音も5の指で弾かなければならないのですが、ここは ”5の指で二つの音をつなげなければならない” と、機械的に考えるのではなく、前述したように ”ミとファのメロディーの音をよく聴く” 方を優先させることです。

メロディーを弾く5の指は緊張させず楽に保って、ミからファへ移るときは手は横にスライドさせるように。
弾きにくいところは、気持ちが慌ててしまいがちです。
慌てずに落ち着いて臨むことも大切です。
そしてメロディーがきれいにつながって聴こえるようにということに集中します。
そうすると、指は自然にそのように動いてくれると思います。

え?
そんな簡単にできるものなの?

と、思いますよね。
私が生徒さんにアドバイスするときによく言うのですが「言う事は簡単だよね。でもそれを実践することは難しいよね」と。

簡単にできることではないと思います。
練習の度に気をつけながらやっても昨日もできなかった、今日もできなかった・・・
それでもあきらめないで、できるようになることを信じて頑張る。

ちょっと熱くなってきて話がそれそうになってきたので、戻しますね。
そう、ここの5の指と5の指でメロディーをつなぐのは難しいです。
1、指は緊張せず、力を入れないように。
2、8分音符はメロディーに寄り添うように。
3、メロディーがきれいにつながって聴こえるように集中して聴く。

この3つのことに気をつけながら、がんばってみてください!
あきらめずに練習し続ければ、必ずできるようになると信じて。

 

さいごに・・・

ピアノの演奏の解釈は様々なので、ここに書いたのはあくまでも私自身が感じたこととして受け止めていただきたいと思います。

たくさんのことを書いてしまいましたが、どれだけのことができるか。
これにはかなりの個人差があります。

教える側からしたらあれもこれもとたくさんのことを要求してしまいがちなのですが、そうではなく生徒さんのペースに合わせてできることから少しずつ進めていくこと、そしてここに書いたこと全てができたら良くて、そうでなければ良くないということではなく、一つのことができるようになったことに対して認めてあげること。
その過程を大切にして、レッスンをしていきたいと思っています。

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