50.Allegro vivo ~ツェルニー 100番練習曲 Op.139~
こんにちは♪
第27回 グレンツェンピアノコンクール 地区大会、中学Aコースの課題曲になっている ”50.Allegro vivo” 。
気が付いたことや感じたこと、練習するときに気をつけたいことなどをまとめてみました。
50. Allegro vivo
イ長調 8分の6拍子
Allegro vivo.(速く 活発に)
A(1小節目~8小節目)
B(9小節目~20小節目)
A(21小節目~28小節目)
8分の6拍子とは?
8分音符を1拍として、小節内が6拍ずつ進んでいくのが8分の6拍子です。
”強 弱 弱 中強 弱 弱” という具合に、123456の1拍目を強く、4拍目はやや強く、その他のところは弱くで、6つ数えながら手拍子を打ってみると、6拍子の拍感が分かりやすいものとなります。
これをゆっくりな曲であればゆらゆらと揺れるように、この曲のように活発でテンポの速い曲であれば6拍子を大きく2拍子として感じて弾きます。
6拍子の1拍目が ”1” 、4拍目が ”2” となるという事です。
”123 223” と、数えてみると分かりやすいかと思います。
そして、大きく捉えた1拍目の強、2拍目の中強をよく感じて弾くことによって演奏者は拍にのって気持ちよく演奏することができ、聴く人は躍動感を感じて楽しむことができます。
ただし、曲中に出てくるアクセントやフレーズのとり方によって、必ずしもそうはならない場合があるので、アクセント記号を見落とさないことと、違和感なく自然に流れて聴こえるフレーズのとり方を考えることが大切になってきます。
アーティキュレーションとフレーズの関係
では、どのようにフレーズをとったら違和感なく自然な流れとなって聴こえてくるでしょうか。
それにはまず、フレーズを構成している一番細かい単位である ”アーティキュレーション” を正確にとることだと思います。
アーティキュレーションとは
1フレーズ内の旋律をより小さな単位に区切り、それにある形と意味をあたえること。
例えばスタッカートに奏するとか、レガートに奏する、など。新音楽辞典より引用
楽譜を見てみると書いてある音符をどのように演奏するのかが指示されています。
また、19、20小節目のように何も指示されていない音もあります。
これは私たちが日常使っている話言葉に置き換えるととてもよく分かると思います。
例えば
「すずめがチュンチュンとないています」
これを
「す ずめが チュ ンチュ ン とないてい ます」
と話したら、相手の人は聞き取りやすいでしょうか。
「すずめが チュン チュン と ないています」
このように話すと思います。
さらにこれを、
「す ず め が」という風に一つ一つ念を押すように話さないと思います。
また、すずめのなき声「チュン」をスラーのようになめらかに発音したらどうでしょうか。
これにアーティキュレーションをつけるとしたら・・・
すずめが → スラー
チュン → 軽やかなスタッカート
チュン → 軽やかなスタッカート
と → 何もつけずに優しく
ないています → スラー
普段の話し言葉では何も意識しなくても、自然とこのように話すのではないでしょうか。
楽譜に書いてあるアーティキュレーションは、話し言葉のように ”このようにお話ししてください” というメッセージだと思います。
そして、それぞれのアーティキュレーションが集まって一つのフレーズができあがります。
「すずめが」「チュン」「チュン」「と」「ないています」の、アーティキュレーションが集まって、「すずめが チュン チュン と ないています」というフレーズになるということです。
話し言葉に置き換えるととても分かりやすいと思うのですが、このように楽譜に書いてあるアーティキュレーションを正しく読み取るということは、自然な流れとなって聴こえてくるフレーズを作りあげる上で本当に大切なことだと思います。
アーティキュレーションの確認
偉そうなことを言っていても私自身、普段の練習でアーティキュレーションをうっかり見過ごしてしまうことが多々あります(笑)
そこでじっくりと楽譜とにらめっこして、この曲で見過ごしてしまいそうな箇所をまとめてみたいと思います。
1小節目
タイで結ばれたミの音から次のドの音へはつなぎません。
ミからドに移るときにはミの音の長さが短くならないように、十分長さを聴いてドの音へ入ります。テンポが速いので、手は鍵盤にのせたまま鍵盤だけを上げるようにしてドの音に入るようにすると上手くいくと思います。
2、5、6、小節目も同じです。
3小節目
3拍目の8分音符のシの音から次の4拍目の装飾音のついた音へはつなぎません。
また、3拍目のシの音はスタッカートにもしません。
4拍目の装飾音のついた音と5拍目のラ♯の2つの音をスラーでつなぎますが、ラ♯の音はスタッカートにはしません。
23小節目も同じです。
3小節目は弾きにくいと思っている子が多いのではと思います。
前述した拍感を感じながら力加減を上手くコントロールすることと、フレーズのとりかたによって弾きやすくなると思います。
それについては、後で述べたいと思います。
13小節目
4拍目のラの音と6拍目のファ♯の音はスラーでつなぎますが、ファ♯の音はついついはねてしまいがちになると思います。
ファ♯の音ははねないように。
ラの音についているアクセントを十分に聴いた後、音量を下げることを忘れずに手は落ち着いてファ♯の音におさまるといいですね。
14小節目も同じです。
19小節目の2拍目から20小節目
同じ音が続くとどうしてもはねてしまいがちになりますが、楽譜にはスタッカートは書いてありません。
ただし、はねないようにと鍵盤を押さえすぎると重たい印象になってしまいます。
ノンレガートの軽い感じを忘れないように工夫したいところです。
この部分については、後で詳しく書いています。
26小節目
1拍目のラの音と2拍目のミの音はスラーでつなぎますが、ミの音はスタッカートにならないように。
その次の4拍目と5拍目も同じです。
アーティキュレーションを正確にとっても上手くいかない場合
アーティキュレーションを正確にとっていても、弾いていてなんだかしっくりとこない、また弾きにくく違和感があるといった場合は、拍感が上手く感じられていなかったり、フレーズのとり方がよくなかったり、また指定されている強弱記号が計画立てて表現されていなかったりすることがあると思います。
前述した3小節目。
ここは少し捉え方を変えると弾きやすくなると思います。
フレーズとしては1小節目から4小節目がひとまとまりになって聴こえるといいですね。
それを構成するアーティキュレーションとして3小節目と4小節目はどのように捉えるといいでしょうか。
3小節目と4小節目は ”シーシシラ♯シドーーラーうん” となっています。
ここのアーティキュレーションを ”シーシシラシ” ”ドーーラーうん” と、感じて弾くのではなく、”シーシシラ” でラの音ははねないように音量を下げて一瞬終わり、その次はアウフタクトで始まるようにシの音は力を抜いて、軽いスタッカートで次のドの音に向うように ”シドーーラーうん” と、感じてみてください。
前にも触れましたが、この曲は軽快で速いテンポの曲です。
スタッカートやブレス、休符は手をフワッと上げている暇はありません。
スタッカートは鍵盤の近くではねるように、休符やブレスは、手はほぼ鍵盤に触ったまま鍵盤だけを上げるようなイメージで臨んでみてください。
9、11、13、14小節目の1拍目、2拍目、3拍目は同じ音が3回続いています。
1拍目を感じて、2拍目と3拍目は若干音量を下げるようにすると、拍感が出ます。(あまりオーバーにならないように)
それとは反対に10小節目の16分音符は、1拍目はあまり強調せず、一番高いミの音に少し向かうように山を感じてなめらかに、そして9小節目と10小節目が1つのフレーズになって聴こえるといいですね。
11小節目と12小節目も同じようにして弾きますが、強弱記号が9小節目と10小節目では p だったのが、11小節目からは mf になっているので、音量を上げることも忘れないように気をつけたいところです。
そして、この mf ですが、これはその先にでてくる cresc のことも想定した上で表現することが大切だと思います。
mf なのである程度の音量は必要なのですが、大きくしすぎてしまうとその後の cresc が表現しずらくなってしまうという事です。
華やかに一番大きく盛り上げたいところはどこでしょうか。
16小節目、17小節目、18小節目は同じ音で同じ音形を3回繰り返しています。
15小節目に入ると直ちに音量を大きくしてしまいがちになりますが、ここはそのまま前からの mf のままで。
crescの書いてある17小節目でもここで急に大きくせず、3拍目のファ♯の音から18小節目1拍目のミの音に向うようにcrescをかけ、さらに18小節目の3拍目のファ♯から19小節目の1拍目のスタッカートのついたミの音に向うようにすると自然に音量の上がった cresc が表現できるように思います。
15小節目は音量は前からの mf のままですが、音形を考えたら若干のクレッシェンド(本当に若干)はつけた方がいいと思います。
ポイントは15小節目6拍目のドレ♯から16小節目の1拍目のミにかけて。
同じように、16小節目の6拍目のドレ♯から17小節目の1拍目のミにかけて、17小節目の6拍目のドレ♯から18小節目の1拍目のミにかけて、18小節目の6拍目のドレ♯から19小節目の1拍目のミにかけて。
4回とも同じですね。
この各音形の中で一番高い音に向っていく部分を、1回目は mf のままなので控えめに向うようにして、2回目は1回目よりも少し向かうように、3回目は2回目よりも向かって、最後の4回目で一番音量が大きくなるように向って、という具合に4段階で音量を上げていくように計画立てるということです。
そうすると、一番華やかに大きく盛り上げていきたいところは3回目から4回目にかけてでしょうか。
そしてその直後、19小節目の2拍目で急激に p になる所はパッと色が変わるように変化をつけて演奏したいところですね。
19小節目の2拍目から20小節目
ここは同じ音が長く続くところです。
全て同じ音量で弾いてしまうと、拍感が感じられずだらっとした印象になってしまいます。
前からの華やかに sf で終わった後、急激に p になりますが、この p は弱弱しい p ではなく、弱くても活発で躍動感のある p がふさわしいと思います。
19小節目の2拍目と3拍目は弱拍の部分なのにで力を抜いて優しく。
4拍目は中強拍の部分なので少しだけ音量を出して、5、6拍目は弱拍の部分なので力を抜いて優しく。
19小節目は p のすぐ後にcresc がありますが急激に強くせず、ここはまだ P のままでもいいような気がします。
そして次の20小節目の123拍で少し音量を上げ、456拍でさらに音量を上げ、21小節目の1拍目の sf に向かうようにすると、自然なクレッシェンドが表現できると思います。
前半の123拍は ”強 弱 弱”、後半の456拍は ”中強 弱 弱” をつけながらクレッシェンドすることを忘れないように。
その他に気がついたこと
16分音符のグループを弾く時に気をつけたいのが、手や指の状態です。
音が速く動くパッセージの場合、速く弾かなければという緊張感から手や指に余分な力が入ってしまいがちになります。
16分音符が上手くいかない場合は、まず手や指は余分な力が入らないようにリラックスした状態で、ひとまとまりのつぶのそろった16分音符になって聴こえるように、この部分だけを取り出して練習してみるのもお勧めです。
また、7小節目から始まる16分音符のグループのような音形は、6小節目を弾き終えた後に5の指と3の指のポジションが変わることを意識して、指の準備にも気をつけるようにすると弾きやすくなると思います。
左手の伴奏は長く伸ばすバスの音が土台となって響き、和音はバスの響きよりも少し控えめな音量でバスの音に溶け込んでいくようなバランスがきれいだと思います。
和音は重たくならず、軽快さがあるといいですね。
楽譜の一番初めに ”この曲集について” という項があります。
ここには演奏するときに気をつけなければいけないことが、詳しく書かれています。
もし、この項を読まれていないという方は是非読んでみてください。
日々の練習での疑問点の解決につながるかもしれません。
さいごに・・・
ピアノの演奏の解釈は様々なので、ここに書いたのはあくまでも私自身が感じたこととして受け止めていただきたいと思います。
たくさんのことを書いてしまいましたが、どれだけのことができるか。
これにはかなりの個人差があります。
教える側からしたらあれもこれもとたくさんのことを要求してしまいがちなのですが、そうではなく生徒さんのペースに合わせてできることから少しずつ進めていくこと、そしてここに書いたこと全てができたら良くて、そうでなければ良くないということではなく、一つのことができるようになったことに対して認めてあげること。
その過程を大切にして、レッスンをしていきたいと思っています。