あそび ~ピアノ・コスモス・シューレ 3 ~

こんにちは♪

第27回 グレンツェンピアノコンクール 地区大会、小学5・6年Bコースの課題曲になっている ”あそび” 。
気が付いたことや感じたこと、練習するときに気をつけたいことなどをまとめてみました。

 

あそび

ホ短調 4分の2拍子
Vivace

A(1小節目~8小節目)
B(9小節目~16小節目)
A(17小節目~24小節目)

Vivaceは、”はやく、生き生きと” という意味です。
”あそび” という曲名の通り、子どもたちが活発に動き回っているイメージをもって演奏したいですね。
ところがこの曲はホ短調。
”あそび” は楽しいものです。
にもかかわらず、楽しいことをイメージさせる明るい長音階の調子ではないので、演奏する子供にとっては少しイメージがしづらいかもしれません。

 

”あそび” とは

子どもと一緒にどんなイメージを膨らませながらレッスンしたらいいのかな・・・
いろいろと考えていました。

そもそも ”あそび” とは何だろう・・・
普段何気に使っている言葉でも、改めて考えてみると漠然としてしまうことが多々あることに気づかされます。

”あそび” について詳しく解説されているものがありました。

なるほど。
大人と子どもとでは ”あそび” の概念が違うんですね。
大人は仕事と遊びが分かれているのに対して、子どもは仕事がないので ”あそび” が仕事であり、”あそび” の中でいろいろなことを身につけたり、学んでいく。
したがって、”あそび” は心身の発達に重要な役割を持つ。

なんだか堅苦しくなってしまいましたが、そう考えてみると楽しいことばかりが ”あそび” ではなく、子どもが成長していく過程でのいろいろな経験を ”あそび” と捉えてみてもいいのかなと思います。

例えば、補助輪なしの自転車の練習だったり、鉄棒の逆上がりの練習や縄跳びの練習など・・・
ちょっと現実的すぎますかね(笑)

この曲を演奏するのは小学5・6年の子たちで、これらは誰もが経験してきていることだと思います。

これらも ”あそび” の一つとするのであれば、楽しかったと思う子もいるかもしれませんが、なかなか上手くいかず、できるようになるまでは辛かったと思う子の方が多いのではないでしょうか。

また、ここまで深く考えず ”寒空の下、元気に動き回っている子どもの様子” をイメージしてもいいのかもしれませんね。

曲に寄せるイメージとは違っているかもしれませんが、レッスンを進めていく中で何か他のイメージが湧いてくるかもしれません。
これはパッとひらめく時もあれば、なかなかつかみにくい時もあり・・・
日々練習を重ねながら、自分なりのイメージを作り上げていけるといいですね。

 

曲全体の音量を考えてみる

この曲に出てくる強弱記号をまず見てみましょう。
譜面に書いてある順番に・・・
p、mf、p、cresc、dim、p、pp、となっていて、全体が様々な音量で演奏される曲であることが分かります。

曲中で強弱記号が変わる時。
例えば p(弱く)から mf(やや強く)に変わる時に、弱く弾いていたところから次はやや強くにパッと変わるのか、もしくは間にcrescが入っていて、だんだんと音量が上がっていった先にやや強くに変わるのか。
前者の場合と後者の場合とでは、表現される雰囲気が曲によって良くも悪くも違ってきます。

楽譜をよく見て、強弱記号がどのように指定されていて、それをどのように表現したらよいのかを計画立てることは大切なことだと思います。

それから P(弱く) の音量。
確かに p は ”弱く” という意味なのですが、これをただ ”弱く” とだけ捉えてしまわないように。
本番で実際に演奏するのは大きなホールです。
一番最後には更に弱く弾く pp が出てきます。
p の音量が小さすぎることによって、pp の音量が p の時と同じ音量になってしまったり、音が抜けてしまうといったことにも陥るかもしれません。
また、ppの音量は大きなホールで十分にppで聴こえた方がいいと思います。

あらゆることを想定しながら、弱く弾く時の音量には気をつけるべきだと思います。

 

 テンポ

”Vivace” とあるように、生き生きと、活発なイメージをもって弾き始めたいですね。
他の曲のところでも同じことを書いたと思うのですが、どれくらいのテンポでこの曲を弾きたいのかを明確にすることが大切なことだと思います。

この曲は4分音符を1拍とした2拍子です。
自分が演奏したいテンポで ”12” と、唱えてから弾き出すように、またそれを最後まで感じて弾くことを忘れないようにすると、曲全体のテンポを安定して弾くことができると思います。

自分ではそれができているつもりだけれど、本当にきちんとできているのかどうか。
この曲のように速いテンポの場合、必ず弾きにくいところが出てくると思います。
私自身もそうなのですが、弾きにくいところというのは無意識にテンポが緩んでしまいがちになります。

そこでメトロノームを使ってみます。
そうすると、メトロノームは常に同じテンポで鳴っているのに、弾いていてとても速く感じる箇所があったり、逆に遅く感じる箇所があったり・・・

これは、速く感じるところはテンポが間に合っていない状態で、ゆっくりに感じるところは逆にあわてて弾いてしまっているということです。
こういった場合はメトロノームを使って違和感を感じる箇所をさらいなおす必要があります。

 

つぶのそろった16分音符

前述した ”テンポ” のところで、メトロノームを使った練習をした時に16分音符のところが遅れがちになってしまう場合が多いと思います。
また、メトロノームに合わせて弾けているのに16分音符のところで何か違和感を感じたり・・・

このような場合には16分音符を弾く時に余分な力が入りすぎているかもしれませんね。

例えば、1小節目の2拍目にある16分音符は初めの音にアクセントがついています。
アクセントは、際立って聴こえたい音についています。
どれくらい際立って聴こえたら良いのかは、曲によって違ってくるのは言うまでのこともないのですが、アクセントを ”強く” と考えてしまうと音楽は自然な流れになって聴こえづらいと思います。

1小節目の2拍目の始めの音についているアクセント。
ここは強弱記号が p になっています。
”p で聴こえたいところについているアクセント。” と、考えてみるとどのような音量でアクセンにもっていったらいいのかが見えてくると思います。

そしてアクセントで一つ目の音を際立たせた時と同じ力加減で次の音も弾いてしまうと、16分音符は重たい感じになるだけでなく、音の大きさもまちまちなでこぼことした感じになってしまうと思います。
ここはスラーがかかっている音のグループをひとまとまりに、きれいにつぶのそろった16分音符で演奏したいですね。

アクセントの後は余分な力を抜いて、そして極端に飛び出る音がないようによく聴きながら。
また、スラー最後の8分音符の ”ソ” の音にもたれると重たくなってしまうので、この ”ソ” の音のところで力を入れてしまわないように。

もう一つ気をつけたいのが指の準備です。
準備とは弾くべき音の鍵盤の上に正しい指を置くことです。
一つの音を弾いた後に次の音の準備をしていては、スラーのかかっている音のグループをひとまとまりに弾くことは難しいです。
指は、スラーでひとまとまりになっているグループ全ての音に対して準備をしてから弾くようにすることも大切だと思います。

そして、同じ16分音符でも2小節目の1拍目の裏から出る16分音符のグループでは初めの ”ファ”の音から力を抜いて弾くように、”ファソラ” は ”ラ” の音に向うようにするときれいです。

通常2拍子は1拍目が ”強” 2拍目が ”弱” で進んでいくのですが、そうではなくアクセントによって強拍の部分が違っていたり、フレーズを考えた時に必ずしもそうはなっていないことが分かります。
フレーズをどのようにとったらいいか迷ったときには、声に出して歌ってみることです。
どう歌ったら自然な流れに聴こえるか。
いろいろ試しながらフレーズのとり方を探っていくのは、とても良い勉強になると思います。

 

スタッカートとメッゾスタッカート

軽快な速いテンポの曲なので、スタッカートはそんなイメージで軽くひいてあげるといいと思います。
手は上の方に上げ過ぎず、なるべく鍵盤の近くではねるようにすると軽快な速いテンポでも余裕をもって弾くことができると思います。

そして、13、14小節目に出てくる左手のスタッカートはテヌートがついているのでメッゾスタッカートです。
スタッカートよりも少しはねるのを落ち着かせるような感じで。
でも、やりすぎてしまうと重たい印象になってしまうので軽快さは損なわないように注意が必要だと思いました。

また、メッゾスタッカートの所だけが音量が大きくなってしまわないように、右手のメロディーの音量とのバランスをよく聴くことも大切です。

 

その他、気になったこと

10小節目にcrescでだんだん強くしていき15小節目でdimになっていますが、このdimは表現しづらいのではないかと思いました。

ここはdimが書いてある15小節目の1拍目で急に弱くするのではなく、むしろ1拍目は強いままで、次の2拍目で気持ち音量を下げ、次の16小節目の1拍目で少し弱くして落ち着くようにして、あまり急激なdimにして音量を下げ過ぎない方がいいような気がします。
そして、16小節目の2拍目の16分音符のグループの始めの ”シ” の音は、その前の1拍目の ”シ” と同じ音量で弾き始め、16分音符のグループをひとまとまりにしてデクレッシェンドをかけるようにするとまとまりやすいと思います。

またこの16分音符のグループは4321の指で弾くことになると思うのですが、1の指で弾く最後の音がファのシャープなので、始めのシの音を弾く時から手全体を1の指で弾くファのシャープの位置に合わせるように少しだけ上の方のポジションに置いて弾くようにすると上手くいくと思います。

23小節目に書いてあるrit.もそうです。
rit.が書いてある1拍目の部分で急にゆっくりにしてしまうと、終わり方がしっくりとこないような気がします。

1拍目ではまだゆっくりとしないで、その次の8分休符を落ち着いて感じるようにします。
そしてアウフタクトのシの音から24小節目にある16分音符に向うようにして、テンポをゆっくりにしますが、間延びしてしまうくらいにゆっくりにし過ぎないように。
あくまでも16分音符であることを忘れないように。

レッスンの中でよくあることなのですが、曲の一番最後の音を弾いた瞬間に ”終わり” と思ってしまう子が結構います。
そうではなくて「一番最後の音を弾いて、正しい音の長さを聴き、鍵盤が上がって音がなくなり初めて ”終わり” なんだよ。」と生徒さんによく言います。

一番最後の4分音符は、ゆっくりにした状態のテンポできちんと1拍を感じてから終わるように心がけることができたらいいですね。

 

さいごに・・・

ピアノの演奏の解釈は様々なので、ここに書いたのはあくまでも私自身が感じたこととして受け止めていただきたいと思います。

たくさんのことを書いてしまいましたが、どれだけのことができるか。
これにはかなりの個人差があります。

教える側からしたらあれもこれもとたくさんのことを要求してしまいがちなのですが、そうではなく生徒さんのペースに合わせてできることから少しずつ進めていくこと、そしてここに書いたこと全てができたら良くて、そうでなければ良くないということではなく、一つのことができるようになったことに対して認めてあげること。
その過程を大切にして、レッスンをしていきたいと思っています。

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