暗譜ができない・・・その原因と対処法
暗譜での演奏。
何回やってもどうしても上手くいかないところがある。
この部分だけがどうしても思い出せない。
暗譜できていると思っていたところを突然忘れてしまった。
などなど。
ピアノを練習している人は一度は経験されたことがあるのではないでしょうか。
私もあります。
たくさん経験しました(笑)
これからも経験すると思います。
もしピアノを弾くロボットがあったとしたら、故障したり不具合がない限りは何回弾いても間違えることなく演奏することが可能です。
でも、人間が演奏するとなればそうはいきません。
① ロボットであれば一度作り上げればいいのに対して、人間は自身の練習に左右されるということ。
② 人間には感情があり、練習が十分にできていたとしてもその時の気分や人それぞれ何かしらの感情によって上手くいかないこともあるということ。
今回は①の「練習」について、私が思いついたことをいくつかお話しします。
その中にやったことがない練習方法があれば一度試してみてください。
1、いつまでも楽譜にたよりすぎていないかな?
新しい曲の練習を始めるのに、まず初めは楽譜を見ながら練習をしますよね。
楽譜に書いてある音を読んでピアノで弾いてみるのですが、その時に大切なのはただなんとなく音を読んで弾くのではなく、ピアノで弾いている音を聴きながら、読んでいる音をなるべく早く覚えてしまうことを意識して練習することです。
「覚える」ということには個人差がありますが、早く覚えることができることが良くて、早く覚えることができなければ良くないということではありません。
普段の練習の時に「覚える」ということを意識することが大切だということです。
いつまでたっても楽譜がないと弾けないという場合は、まずは練習の時にこのことを意識するようにしてみてください。
2、指番号は大丈夫?
指番号の大切さについては以前にもお話したことがあるのですが、私は適切な指番号で弾いているか弾いていないかによって曲の仕上がりに大きな差が出てくると思っています。
もちろん暗譜にも影響はあると思います。
1の練習で楽譜を見ながら弾く時には指使いも守りながら弾くべきです。
新しい曲の練習を始める時、ついついピアノで音を出すことだけが一番優先されてしまうんですよね。
指番号を見ないで楽譜に書いてある音だけを弾く。
そうした時には、自然と自分が一番使いやすい指がいってしまう。
それがたまたま楽譜に書いてある指使いであればいいのですが、そうでない場合もあります。
指番号を意識しないで(もしくは全く無視して)弾いている場合、フレーズやアーティキュレーションはほとんど考えずに弾いている場合が多いです。
結果、弾いている本人にはどこか違和感のあるフレーズとなって聴こえてくるため、暗譜もしずらくなってしまうのだと思います。
指使いの大切さについて書いた記事はコチラ
指使いのお話
3、息をしながら弾けているかな?
突然ですが・・・
「かえるのうた」の最初の部分を歌ってみてください♪
A かえるのうたが〇きこえてくるよ
B かえ〇るのう〇たがき〇こえてくるよ
C かえるのうたがきこえてくるよ
Aで歌うのが一番自然で、歌っている人も聴いている人も心地よく、きっとみなさん〇のところで息を吸ってAのように歌うと思います。
Bのように歌う人はいないと思います。これでは何を言っているのか歌詞の内容が分かりずらいです。
Cで歌った場合、歌詞の内容は分かるかもしれませんがダラ~っとした印象で、息が吸えないので歌っている人は苦しくなってしまいます。聴いている人も「苦しそう~」ってなってしまいます。
これはピアノで弾く場合も同じです。
いま練習している楽譜をもう一度よく見てみてください。
「ここからここまではなめらかに音をつないで弾いてくださいね」というスラーや音符の後にある休符。
これらが守られているかどうか。
例えば長いスラーの途中で音と音が切れてしまう箇所があれば、指使いが違っていないかどうか確かめる必要があります。
守られていないものでよくあるのが休符です。
休符はついつい見逃してしまいがちで、メリハリのない演奏になってしまうだけでなく区切れ目がないわけですから暗譜もしずらくなってしまいます。
スラーや休符を確認しながら「このメロディーはどこからどこまでで一息かな?」とか「このメロディーはここで息(ピアノでは一旦鍵盤を上げる)を入れた方が自然だな~」など、考えてみてください。
息をするところから息をするところまでを1つのグループとして演奏すると、息をしないで弾いていた時よりも引き締まった印象になるだけでなく、グループごとに暗譜しやすく頭の中も整理されると思います。
4、音の役割を確認してみよう
片手ずつ暗譜で弾くことをやったことありますか?
両手で弾くと上手く弾けていても、片手ずつ暗譜で弾いてみると「あれ?」ってなるところが出てくるかもしれません。
その場合は、片手ずつでも暗譜で弾けるように練習してみてください。
そしてメロディーだけを弾いている時には伴奏の音をイメージしながら、伴奏だけを弾いている時にはメロディーの音をイメージしながら。
メロディーを口ずさみながら伴奏を弾くのも良い練習だと思います。
両手で弾くときには、メロディーと伴奏の音のバランスは大切になってきます。
片手ずつ暗譜すると、「メロディー」「伴奏」の役割が明確になって、両手で弾く時に音のバランスもとりやすくなって、両手での暗譜も安定すると思います。
5、途中から弾くこと、できる?
これは本当に多いのですが、「ここから弾いてみて」と、曲の途中から弾くことを言うとまるで初めての楽譜を見たかのように目が真ん丸になり、弾けなくなってしまう子がいます。
鍵盤のどこに指を置いたらいいのかも分からず、フリーズした状態になってしまったので「あ、じゃあ始めから弾いてみよう♪」というと、フリーズした箇所は何の問題もなく弾けてしまいます。
これはフリーズした箇所は「前からの流れでなんとなく覚えている」という可能性が高いです。
曲の初めからしか弾いたことがない方は、何ヵ所か途中から弾くことができるかどうか是非試してみてください。
初めは楽譜を見ながら、それができたら暗譜でもできるかどうか。
もし途中から弾けない箇所があった場合は、その箇所から弾くことができるように練習してみてください。
ポイントはどこの鍵盤に何番の指を準備してから弾きだせばいいのか?を確認してしっかりと指を準備してから弾きだすことです。
できる限りたくさん、いろんな箇所から弾けるようにすることで曲全体が弾きやすくなります。
それから、弾いている途中で次が分からなくなり止まってしまうこともなくなると思います。
さいごに・・・
今までの練習で一度も間違えたことがないところを本番で間違えてしまった・・・
こんな経験をしたことないですか?
私は何度かあって、「今まで間違えたことなかったのに、なんで?」と、ショックを受けたようになって落ち込んだことがあります。
思い返してみると、「あ~ここの部分はそんなに時間をかけてじっくりと向き合っていなかったな・・・」と反省することがほとんどです。
これは、なんとなく弾けていたところに意味のない自信を持っていて、実は何も理解できていなかったということなんですよね。
だから、緊張する本番でそれが証明されてしまった・・・
今回は生徒さんとのレッスンや自身の練習の中で思いついたことを5つお話させていただきました。
「がんばって暗譜しよう!」と、曲の初めから最後までを何度も何度も繰り返し弾くことに時間を使ってしまいがちですが、実は今回お話したような練習をすることの方が近道なのかもしれません。