バイエル33番 ~フレーズをよく感じることと、無駄のない手や指の動き~

こんにちは♪

つい2~3日前のレッスンでのこと。
一つの曲をどうやっても上手く弾けない子がいました。

上手く弾けない場合、その原因を探るためにその子の手や指の使い方、目の動き、楽曲のとらえ方、必要に応じて体の使い方などをじっくりと観察する必要があります。

その子がどうしても上手く弾けなかったのがバイエルの33番。
この33番を例にとってお話ししたいと思います

 

バイエル教則本

教則本は様々な種類のものがありますが、私はすべての生徒さんにバイエル教則本を使用しています。
バイエルについては賛否両論の意見を数多く耳にしますが、長年バイエル教則本と向き合ってきて私なりにバイエルの優れている部分を多く感じているのでバイエル教則本はずっと変わらず使用しています。
それについてはまたの機会にお話ししたいと思っています。

 

バイエル33番

バイエル33番です。
ご覧の通り、右手と左手で同じメロディーを弾き、これを先生と連弾するようになっています。
形式はaとa’のフレーズから成るAと、bとa’のフレーズから成るB。
このような形式を二部形式と言います。
バイエルはこの二部形式で書かれているパターンが多いです。

標準バイエルピアノ教則本(全音楽譜出版社)より

この二部形式の構成をよく理解して臨めば間違いなく弾けるはずなのですが、どうしても上手く弾くことができません。
目はきちんと楽譜を追って弾いていますが、ミスタッチが目立ちます。
そして、どこかぎこちなく聴こえてきます。

「どうして上手くいかないのかな・・・」

よく聴いていると上手くいかないのは楽譜に記した赤い→の部分。
→の部分はどこもスラーの終わりとスラーの始まりの部分で、スラーの終わり方が上手くできていないため、次のスラーに上手く移れていないようです。

 

スラーの意味

ここで、スラーのお話を少し。
スラーとは違う音どうしにつけられた弧線で、弧線で記された音と音はなめらかに奏するという意味です。
スラーは2つの音につけられる短いものから、3つ、4つ、5つ・・・・とたくさんの音のグループにつけられたりもします。
そしてそれをアーティキュレーションとして捉えたり、またはフレーズとして捉えたりします。

例えばこのバイエル33番を歌ってみたとしましょう。
息継ぎをしないで最初から最後まで歌うことができるでしょうか・・・

歌う前に思いっきり息を吸って、とっても早いテンポでなおかつ少しずつ息を使いながら歌えばできないこともないでしょうが(笑)
この状態をスラーで表すとすれば曲の一番初めの音から一番終わりの音までを1つの長~い1本のスラーで表すという事になります。

歌やリコーダーなど直接息を使って演奏するものとは違い、ピアノの演奏はそれをしなくても指を使って延々と音と音をつないで演奏していくことは可能です。
でもそれでは音楽に呼吸や抑揚を感じることもなく、とても窮屈なものになってしまいます。
当たり前のことなのですが、ピアノを演奏するには歌やリコーダーと同じく息を感じて演奏しているということを忘れてはいけないのです。

 

フレーズをよく感じること

楽譜に書いてあるスラーの意味の大切さは日頃のレッスンでは特に重要視している部分です。
きっと子どもたちの耳にはたこができているでしょう(笑)
なので子どもたちは新しく課題を出すと、次のレッスンではスラーに気をつけながら練習してきます。

ところが、”スラーとスラーの間にはブレス(息継ぎ)を入れる” と、ただ単純に捉えている場合にはブレスは入っているものの機械的な仕上がりになってしまいます。
そして、単純にしか捉えていないので手や指の使い方も上手くできません。
今回、バイエルの33番がうまく弾けない理由はそこにありました。

このブログの音楽用語・専門用語のページにも記載している通り、フレーズとは ”楽句のこと。旋律線の自然な区切れをいい、散文における節ないし文に相当するもの。” です。

分かりやすく言うと文章を読むときにある程度の文章のまとまりの後に「、」や「。」を使うのと同じです。
「、」や「。」のところで適度な呼吸(ブレス)や間を入れながら文章を読んでいくと、話の流れが自然で読み手も聞き手も文章の内容が理解しやすくなります。
さらに文章の内容に応じて声色や大きさを変えたり、抑揚をつけることによってよりリアルに聞き手に伝わります。

先ほども息継ぎなしで歌う事のお話をしましたが、「、」や「。」を一切無視して読んでいってしまったり、間の取り方が極端に空いてしまったり、また全然関係のないところで「、」や「。」を入れてしまったりすると自然な流れの音読には聞こえません。

音楽を演奏するときも音読と同じようにメロディーが自然な流れとなって聴こえてくるように、フレーズをよく感じることが大切になってきます。

 

スラーの最後の音を正確にとることと、ブレスのとり方、指のこと

では、どうしたらバイエルの33番を上手く弾くことができるのでしょうか。
バイエルの33番の場合、スラーの最後に書いてある※の4分音符(1拍)の音がポイントだと思います。
※の音のことを何も意識せず、ただ単純にブレスを入れることだけに専念して弾いた場合、たぶん※の音符は4分音符の長さである1拍の長さは保たれず短くなり、そして必要以上に大きな音量となり、スラーからスラーへ移る際に自然な流れにならず、とてもぎこちない感じに聴こえてしまいます。

どうしてこのようなことが起こるかというと、譜面からも分かるように、3拍目※の音の次にはすぐに1拍目の音があり、この3拍目※の音と次の1拍目の音との間にはブレスが必要です。

※の音を弾いたらすぐにブレスをとって、次の1拍目に遅れないように入らなければいけないという焦りの気持ちから※の音を弾いた瞬間に※の音の長さよりも次にくるブレスを優先させてしまい、その結果※の音は1拍の長さを保てず短くなってしまうのです。
そして、このような場合ブレスをとるときの手は高く上がってしまっています。

もっと気持ちが焦ってしまうと※の音は短くなるだけでなく、スタッカートのようにはねてしまうケースもあります。

手が高く上がってしまえば次の音に移るのに時間のリスクを伴い、上がった手が鍵盤の正しい位置に下りなかった場合ミスタッチへとつながります。
また上がった手を下ろした反動で余計なアクセントがついてしまうこともあります。
手が高く上がってしまうというのは何の意味ももたない、何もメリットのない余計な動きだと思います。

これではせっかくブレスをとっていても上手くいかないはずです。
※の音は4分音符で1拍の長さが必要です。
まずはこの1拍の長さをしっかりと感じて落ち着いてスラーの最後を終わらせることです。

そしてブレスは歌う時の息継ぎであり、手を高く上げることではありません。
これもよく勘違いしている子が多く、冷静に考えてみればブレスをするには手を上げるのではなく、鍵盤が上がればいいのです。

指は鍵盤に触ったままの状態で呼吸を感じて鍵盤を上げるようにだけすれば、3拍目から次の1拍目に慌てる必要は全然ありません。
鍵盤に触ったままなのでブレスの後の次の音はミスタッチをすることもなく、落ち着いて入ることができ、余分なアクセントがついてしまうこともありません。

そして、もう一つ。
※の音はフレーズの流れとしてどこの箇所も音量を変えないか、もしくはほんの少しだけ音量を下げるようにするときれいです。
にも関わらず音量が逆に大きくなってしまうことがよくあります。
これは、※の音は右手の場合すべて1の指で弾くようになっており、1の指(親指)というのは他の4本の指と構造が違うこともあり力の入りやすい指なので、指のことを何も考えていないと※の音だけが極端に大きくなってしまうのです。
※の音を弾く右手の1の指は音量のバランスをよく聴いてコントロールする必要があります。

 

音域と手のポジションを考える

もう一度バイエル33番を見ていただきたいのですが、右手も左手も同じ音で音域はどちらも5度です。
そう。
もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、右手も左手もそれぞれ鍵盤のソラシドレに5本の指を置いておけば初めから最後まで弾けてしまうのです。

簡単に言ってしまうと鍵盤のソラシドレの上に5本の指をずっと置きっぱなしでいいのです。

にも関わらずこれを1つの音を弾くたびに手のポジションが移動してしまったり、右手と左手の1番の指(親指)が鍵盤から落ちてしまっていると1の指を使うたびに鍵盤の上に1の指をもってこなければならず、とても効率の悪い指の使い方になってしまいます。

とにかく余分な手の動きや指の動きをなくすということです。
ただ、手がまだ小さな子どもにとってはこれが簡単なようでとても大変なことなので、すぐにできるようになることを期待せず、レッスンのたびに根気よくアドバイスしてあげることで、だんだん習慣づいてくるようになります。
そして、ポジションの移動をせずに弾くことができる曲で慣れてくるとポジション移動が必要な曲を練習する時にそれを上手く応用することができます。

全106番まであるバイエルは45番までがポジション移動をしなくてもよい音域でできているので、決められたポジションに手を置いたままの状態で余分な動きをしないように弾く練習になります。
また、ポジションの移動がないので、右手と左手10本の指それぞれの力加減をコントロールする練習がしやすいと思います。

 

バイエル33番がどうしても上手く弾けなかったこの生徒さん。
ここまでお話しした内容をレッスンしましたが、次のレッスンまでに克服することができるでしょうか。
楽しみです。

「もしまた上手くできていなかったら?」

1週間で完璧にできる子なんてそうそういません。
まして、手や指の使い方を克服するには長期に渡ることの方がほとんどです。
上手くできなかったら、また同じことを根気よくレッスンするだけです。
その積み重ねが大切なことだと思っています。

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