自分で弾いている時の音、どんな風に聞いていますか?
こんにちは♪
ピアノの練習に関してのことは以前にもいろいろとお話ししてきたのですが、これについてはとても奥が深く、語りつ尽くすことのできないものだと思います。
私自身も毎日の練習の中で新しい発見があったり、上手くいかない点の原因が見つからず試行錯誤したりする日々です。
今日は、”聴く” ということをテーマにお話ししたいと思います。
”聞く” と ”聴く” のお話し
ある日のレッスンでの生徒さんとの会話。
「”きく” っていう漢字って、どうやって書く?」
子どもによく質問をする内容の一つです。
小学2年生くらいであれば、”聞” という字は学校で習いますよね。
「うん!知ってるよ。こうでしょ?」
と、得意気に書いてくれます。
「”きく” って漢字は、実はもう一つあるんだけど知ってる?」
「え~ そうなの? 知らないよ。」
知るはずもないですよね。
調べてみたところ、 ”聴” という字は中学校で習う漢字のようです。
「こう書くの」
と、”聴く” と書いて見せると・・・
「へぇ~ なんか難しい字だね^^;」
と、少し苦笑い。
「一つあればいいのに、なんで二つも ”きく” の漢字があるの?」
興味がある子は積極的に聞いてきます。
聞く・・・自然に耳に入ってくる
聴く・・・聞こえてくるものを注意深く捉える
簡単に言うとこんな感じでしょうか。
「○○ちゃんが興味のあるお話を誰かがしていたら、どんなお話なんだろうって一生懸命に聴くでしょ?そんな時には ”聴” の字を使うんだよ。」
「○○ちゃん、ピアノのレッスンで先生がお話しするときには、いつも一生懸命に聴いている?」
「うんうん、聴いてるよ(笑)」
「それは偉いね。 ”聞” にならないでね(笑)」
「そうそう、もう一つ大切なこと。練習しているときのピアノの音も ”聴” で聴いてね。」
「うん! そうしてるよ!」
と・・・
自信満々でお返事をしてくれました(^v^)
”聴く” ということ
ピアノを練習している時、ピアノをステージで演奏している時、どんな時も聞こえてくる音に耳を傾けるということは大切なことなのですが、これが簡単なようで意外と難しいことなのかもしれません。
”弾いた音が合っているか、違っているか” という目的で聴くことは大抵の子がやっていることだと思うのですが、”弾いた音がどんな風に聞こえているか” という目的で聴いている子は少ないように思います。
私は中学で習う ”聴” という漢字をあえて書いて子どもに見せるのですが、 ”聴く” ということの意味を年齢に応じて分かりやすいようにきちんと教えてあげること、間違った音を見つけるためだけに耳を使うのではなく、常にイメージを持ってもっと広い目的で耳を使うことを指導してあげることはとても重要なことだと思っています。
ただ、これにも個人差がかなりあって、私の方から言わなくても自然とできている子、できていなかった子でもそれを教えてあげたことによってすぐにできるようになる子、なかなかできるようにならない子・・・
様々です。
自然とできている子が一番いいように思いますが・・・確かにいいですね(笑)
でも、なかなかできなければ良くないということではないと思います。
なかなかできるようにならない子の中にもさらに個人差があり、これはその子に必要なだけの時間を十分にかけて、あきらめずに何度も何度も根気よく教えてあげることが大切だと思っています。
聴く。
よく ”いい音楽をたくさん聴くと良い” と言われます。
それは、そうすることによって聴く能力や音楽性が養われ、自身の音楽にも役立てることができるところからそう言われるのだと思います。
”聴く” ようにすることによって得られる効果
あるレッスンでのこと。
右手がメロディー、左手がメロディーの曲をとても楽しそうに弾いてきた子がいました。
音の読み間違いもなく、ミスタッチもなく、よく練習できています。
でも、何か物足りません・・・
とてもよく弾けているのですが、メロディーよりも伴奏の音数の方が多く、右手も左手も同じタッチで弾いているのでメロディーが左手の伴奏の音にかき消されてしまっています。
これは音が合っているか、違っているかのみにしか耳を使っていない典型的な例だと思います。
このような場合、「左手をもっと小さく、右手はもう少し大きく」と機械的にアドバイスするのではなく、前述した ”聴く” のお話をし、どんな風に聴こえるといいかなどを一緒に考え、よく聴くことに注意をするようにアドバイスしてみます。
すると、完全ではありませんが流れてくる右手と左手の音量のバランスは先ほどとは変わり、右手と左手のタッチは自然とそのように変わりました。
このように、”聴く” という意識を変えるだけで雰囲気がガラッと変わる場合があります。
その他にも・・・
指の動きなどで弾きにくい箇所がある。
こういった場合には、その部分のみを取り出してリズム練習をしたり、指が思うように動いてくれるようになるまである程度の日数を要するかもしれません。
でも、その前に。
例えばこの ”指の動きなどで弾きにくい箇所” って、指を動かすことだけに集中してしまいがちになり、流れてくる音にはあまり集中できていないことが多いと思いますが、いかがですか?
もしも当たっているのであれば、指の動きだけを考えるのではなく、”どんな風に聴こえたら自然なのか” ”自分はどんな風に表現したいのか” ”どんな風に歌うか” などに集中して、もう一度自分で弾いている音を ”注意深く聴く” ことです。
そうすることによって改善すべき箇所を聴き取ることができた場合、今まで指が動かしずらいと悩んでいたところが難なく弾けるようになった、ということもあります。
自分が思うことや、指を動かす動作、音量の操作など全ての動作は自分自身がすることです。
”こう聴こえてきてほしい” と、強く思うことで指は自分の意に反した動きはしないはずです。
それでも上手くいかない場合は、客観的に聴く手段として録音したものを聴いてみるのもお勧めです。
改善される点が見つかるかもしれません。
”こう聴こえてきてほしい” と、自分が思う通りにできているのにまだ指が動かしずらい場合は、前述したように ”部分練習” といったリズム練習などを取り入れながら、指が動かしやすくなるまで努力を続けることです。
最後に・・・
冒頭でもお話ししましたが、ピアノの練習については語りつくすことができず、まだまだたくさんのことがあります。
今日お話しした ”聴く” ことだけに専念すれば良い訳でもありません。
でも・・・
”ピアノを弾く” と聞くと真っ先に指を動かす動作のことを連想すると思います。
確かにそうですよね。
実際、ピアノは指を使って弾くものなのですが、自分の中で指を使って弾くことを一番優先にして練習しているのであれば、一度 ”聴く” ことを一番に優先させてみてください。
短期間では実感できないかもしれませんが、続けていくうちにきっと何か新しい発見があると思います(^v^)