ピアノのレッスン ~褒めるのが良いのか、厳しいのが良いのか~
こんにちは♪
「ピアノのレッスン」と聞くとどんなイメージをもたれますか?
今の大人の方たちは少なくとも「厳しい」とかいったイメージをもたれる方が多いかもしれませんね。
今日はレッスンの在り方について思ったことをお話ししたいと思います。
褒めて育てる、叱って育てる。
先日テレビで興味深い番組を見ました。
それは若い新人社員を褒めて育てる派か、それとも叱って育てる派か。
という内容のものでした。
褒める派と叱る派が討論をして、その様子を若い新人社員が見ていて感想を述べる場面もありました。
そして最後に「あなたならどちらがいいですか」との質問では「褒める」のほうが若干多かったものの「褒める」と「叱る」の比率はほぼ半々という結果でした。
なるほど。
褒めてほしい人もいれば、厳しく叱ってほしい人もいる。
社会人になりたての新人社員でもピアノを習っている子どもでも、年齢や教える内容は違えど指導する側からの接し方は同じだと思いました。
褒めてあげること
「褒めるレッスンと厳しいレッスン」どちらか一つを選べと言われたら、私だったら「褒める」の方です。
でも時には「厳しい」も必要だと思っています。
何事でもそうですが一つのことを始めようとした時、何もなくしては達成することはできません。
良い指導者に恵まれることや家族の協力ももちろん大切なことですが、まずは本人の努力だと思うのです。
努力する度合いには個人差があるので、ここで言う努力とは決して一日に何時間も練習するなどということを言っているのではありません。
別の記事でも同じことを言いましたが、その子ができる範囲での努力ということです。
では、どうやったら努力することができるのでしょうか。
上手くできていないところが何か所もあれば曲全体として見た場合には「まだまだだね」という一言が先に出てしまいがちになるのですが、まずは上手くできたところを見逃さず褒めてあげることです。
曲の中で上手くできたと褒めてあげるところがない場合でも、その子なりに「練習がんばったんだね」ということを言ってあげることもできます。
上手くできたことをまずは褒めてあげた上で、「こんなに上手くできたんだから、ここの箇所もきっとできるよ!」と、言ってあげることにより子どもはがんばって練習してくるようになります。
褒めることを後にしてしまうと、言っている内容が同じでも褒めてもらったというインパクトが薄れてしまうのでしょう。
注意されたことだけが強く残り、褒めてあげたことはそのフォローのような印象になってしまい練習へのモチベーションが下がってしまうように思います。
まずは褒めてあげるということ。
そうすることによってその後の注意すべき点を聞き入れる態勢ができ、練習へのモチベーションも上がります。
厳しくするときには慎重に
”上手くできたことを褒めてあげることで、今度は上手くできなかったところを子どもはがんばって練習してくるようになる”
この習慣が身についてきたら、その子の努力の度合いに応じて少しずつ厳しくしてみます。
ここで言う厳しいとは口調が荒かったり、無理難題を出すといったことではありません。
あくまでも、もう少しできるのではないかという期待感のもとにレッスンをするということです。
この段階では、子ども自身満足のいった仕上がりでいることが多いです。
にも関わらずこちらから新たな課題を出すわけですから、子どもは納得がいかず時には「こんなに練習してきたのに・・・」と、落ち込んでしまうかもしれません。
なので、厳しくする場合には慎重に接することが大切だと思います。
ここでもまず「本当によくがんばってここまで練習して仕上げてきたね」ということを先に。
そして、もっとできるはずということを「○○ちゃんだったらできるはず!」という期待を込めて言ってあげることです。
ただ、これはその子の性格によってポジティブに受け止めて本当にもっと弾き込んでくる子もいれば、努力はしても「もっと」と言われるとそれをネガティブに受け止めてしまう子もいるので、そういったタイプの子には曲が仕上がってタイミングの良い時期に「合格」としてあげるのがベストなのだと思います。
これは「この子はここまでのレベル」という風に解釈するのではなく、何曲も曲をこなしていくうちに少しずつネガティブな考えを改善し、少しずつ自信につなげていってあげればいいことだと思います。
焦らず、長い目で見てあげるということです。
お父さん、お母さんはどう接すれば良いのか
ここまで指導する側の立場でお話をしてきました。
では、レッスンに通うお子さんのご家庭ではどう接してあげたら良いのでしょうか。
指導する側と同じ、褒めてあげることはもちろん、時には厳しいことが必要な時もあるかと思います。
でも、基本的には褒めてあげていつも応援してあげることだと思います。
以前通ってきていた生徒さんでこんな子がいました。
あるレッスンの日、レッスンに来ていきなりワアーっと泣き出してしまったんです。
小学校中学年の女の子です。
この時はびっくりしました。
なだめても、しばらく泣き止む様子はありません。
ようやく落ち着いてきて「大丈夫?」と、声をかけると「お母さんにピアノ上手じゃないって言われた」と言ってまた泣き出してしまいました。
どうやら、ピアノのレッスンに来る直前に言われてしまったようです。
もうこれは絶対に言ってはいけない一言だと思いますし、これは”その子のためを思って厳しく”というのではなく、単なる個人的で感情的な表現のように思います。
子どもが一番信頼しているのはお父さん、お母さんではないでしょうか。
信頼しているその人からそんなことを言われたら、子どもは何を励みにすればいいのでしょう。
指導者である私がたくさん褒めてあげても、子どもは家族の人に褒められるより嬉しいことはないのです。
お父さん、お母さんの気持ちもとてもよく分かります。
自分のお子さんの場合、どうしても歯がゆくなってしまい、ついついキツイ一言を言ってしまうこと。
それは大切なお子さんで「こうなって欲しい」という思いが強いがゆえになってしまうことで、誰でも経験があることだと思います。
でも・・・
もし私がそんな風に言われたら。
「どこがいけなかったのだろう」と思い、また練習に励むと思いますが「上手じゃない」と面と向かってストレートに言われたらショックを受けるでしょう。
やっぱりキツイ一言ですよね。
流れてくるピアノの音を聴いていると、ピアノをやったことがない方でも違った音などに気が付く場合があります。
間違いを指摘されて聞き入れるタイプの子であれば「そこのところもう一度音を確認してみたら?」と言ってあげてもいいかもしれませんが、間違いを聞き入れたくない子もいます。
よくお父さん、お母さんから相談を受ける内容の一つです。
「私が言っても聞き入れてくれないんです」と。
これはその子なりのプライドがあるのだと思います。
そんな子には、たとえ練習時間が短くても「今日は練習がんばってたね」の一言で済ませるようにして、その他のことは指導者に任せてみてはいかがでしょうか。
曲の仕上がり具合や音の間違いを指摘するよりも”練習している行為”を認めてあげること、”また練習しよう”という気持ちになるように言葉がけをしてあげること。
そうやっていくうちに、その子なりのプライドが良い方向へ向いていき自分から音の間違いに気が付いたり、練習しているうちに自然に長い時間ピアノに向かっていたりということにつながっていくのかもしれません。
一つの曲を仕上げていくという事は日々の積み重ねです。
とても大変なことです。
なかなか上手くいかずに苦しい時もあるでしょう。
そんな時にもがんばって練習することができる特効薬は何よりも家族の温かい応援です。
「みんなが応援してくれている」
という気持ちが心の栄養になり、練習することへの励みになっていくのだと思います。