闘牛士 ~バスティン ピアノベーシックス ピアノ(ピアノのおけいこ)レベル 3 ~
こんにちは♪
第27回 グレンツェンピアノコンクール 地区大会、小学3・4年Aコースの課題曲になっている ”闘牛士” 。
気が付いたことや感じたこと、練習するときに気をつけたいことなどをまとめてみました。
闘牛士
イ短調、4分の3拍子、Con brio(コン ブリオ:いきいきと)
A(1小節目~10小節目)
1小節目~4小節目 → a
5小節目~10小節目 → a’
B(11小節目~26小節目)
11小節目~18小節目 → b
19小節目~26小節目 → b’
A(27小節目~37小節目)
27小節目~30小節目 → a
31小節目~37小節目 → a’’
いかにも闘牛士をイメージさせるような曲調で、かっこいいですね!
ところで小学3・4年生の子たち、”闘牛士” と言われてピンとくる子はどれくらいいるのでしょうか。
闘牛を見るのがよっぽど好きで闘牛に詳しい子であれば、この曲のイメージがつくと思うのですが(笑)
そのような子はあまりいないと思いますので、まずは闘牛のお話しからですね。
あ、子どもが興味を持つものは無限大です。
もし、闘牛に興味を持っているお子さんがお見えでしたら、すいません。
闘牛と聞くと私はちょっと残酷なイメージしか思い浮かばないのですが、みなさんはいかがでしょうか。
”闘牛士と牛が戦う競技があるんだよ” くらいでよいのではないかと思ってしまいます。
すいません、これは動物愛護の点から見ても本当に個人的に思ったことです。
”エスパニア カーニ” という曲。
これはスペインの闘牛やフラメンコをイメージした社交ダンスのBGMとして用いられる定番の曲として有名です。
ユーチューブでも ”エスパニア カーニ” を演奏している動画がいくつか見られると思いますので、曲のイメージ作りの参考にされてもいいのかなと思いました。
A(1小節目~10小節目)
Aの出だしはppで始まり、3小節目から8小節目にかけてcresc. poco a pocoの表示の後、9小節目で ffになっています。
ppは ”たいへん弱く”、cresc. poco a pocoは ”少しずつだんだんと強く”、ff は ”たいへん強く”
この音の強さの変化は上手く表現したいですね。
レッスンの中で pp と言うと、聴こえるか聴こえないかほどの音量で弾いてしまう子がいます。
確かに pp なのですが・・・
例えば、学校のペーパーテストで ”ppとはどういう意味ですか?” とあったら ”たいへん弱く” と書いたら正解ですね。
でも楽譜に pp と書いてありそれを表現する場合、それに何か一つプラスをして解釈するといいのかなと思います。
今にも壊れてしまいそうなか細い pp。
暖かくやさしい感じのする pp。
弱いのにどこか力強さを感じ、パワーを秘めているような pp。
いろいろな pp の表現があると思います。
”闘牛士” という題名のこの曲。
楽譜の始めに ”Con brio(コン ブリオ:いきいきと)” の指示があります。
牛と戦う闘牛士の姿は勇ましいです。
そして、一瞬たりとも牛に隙を見せることができません。
どんな pp がこの曲にはふさわしいのでしょうか。
そして、3小節目から8小節目にかけて少しずつかけていく長い cresc 。
どんな風に音量を上げていったら良いでしょうか。
これも様々な表現の仕方があると思うので、いろんなパターンを試してみて、この曲にふさわしい表現を見つけたいですね。
私だったら・・・
cresc が書いてある所からいきなり音量を上げないで、始めの4小節は pp で。
5小節目からじわじわと音量を上げていき、9小節目の ff に向かうと思います。
注意する点は、9小節目の1拍目の音にはアクセントがついているのでそのことも考慮して、手前の8小節目の3拍目のファの音までの cresc でMAXになってしまわないようにということです。
cresc の向かう先は ff なので十分に音量を上げていくのですが、”ff でさらにアクセントがついている音” のことを考慮してファの音まで cresc することによって、9小節目のアクセントの音が印象深いものになると思います。
そして10小節目も9小節目と同じようにアクセントのある音でかっこよく決めたいところです。
右手で弾く一番高いミの音だけを際立たせると、より引き締まった感じになると思います。
ペダルのこと。
9小節目と10小節にはダンパーペダルを入れる指示がありますね。
このペダルは長く音が響かないようにシンプルに入れる方が私は好きです。
2拍目の4分休符まで音が響いていかないように、1拍目の音がキリッと聴こえ、2拍目と3拍目の4分休符を1拍目の音が響いた余韻のように感じたいです。
そして10小節目は3拍目でBのメロディーが始まります。
ここでは1、2拍目と3拍目の区別をきちんとつけたいところです。
10小節目の1拍目の音もペダルが長くならないように緊張感をもってキリッと、2拍目の休符を感じて一瞬終わった感を出して締めくくり、3拍目でがらりと雰囲気を変えるようにBのメロディーに入りたいです。
Bのメロディーはアウフタクトで始まっています。
メロディーの始まりのミの音は重たくならないで、次のラの音に向うような感じにするのも忘れないように。
18小節目の出だしも同様です。
B(11小節目~26小節目)
Bの出だしのところに cantabile(叙情的にうたって)と指示があります。
叙情とは ”感情を述べ表すこと” と、辞書に書いてありました。
まず左手の伴奏。
b も b’ もラドミラ → ソシレソ → ファラドファ → ミソ♯シミ
と、だんだん下がっていく形になっています。
bの右手のメロディ、13小節目の ”シドシラソ” と、15小節目の ”ラシラソファ”
b’の右手のメロディ、21小節目の ”レミレドシ” と、23小節目の ”ドレドシラ”
どれも音は違いますが、音形は全く同じです。(音が同じように動いています)
前述しましたが、伴奏は全く同じです。
でも、bとb’とでは雰囲気が違って聴こえます。
私は、bよりもb’は気持ちが高揚していくような感じがします。
13小節目の ”シドシラソ” は、その前 (12小節目) の ”シド” の ”ド” から一音下がって ”シドシラソ” 。
15小節目の ”ラシラソファ” は、その前の ”ラシ”の ”シ” から一音下がって ”ラシラソファ”。
となっているので、左手の下がっていく伴奏と並進行していて比較的穏やかな感じがします。
それに比べ、21小節目の ”レミレドシ” はその前の シド” の ”ド”から一音上がって ”レミレドシ”。
23小節目の ”ドレドシラ” は、その前の ”ラシ”の ”シ” から一音上がって ”ドレドシラ”。
と、なっています。
それぞれが下がっていく左手の伴奏とは反進行しているところが広がりを感じ、高揚していく気持ちを表しているように思います。
bもb’も ”シド” と ”ラシ” は同じです。
でもその次のメロディーが、この音から一音下がって始まるのと、一音上がって始まるのとではずいぶん雰囲気が変わって聴こえますね。
そしてB (b、b’) は、なめらかなメロディーラインだけれど、mf で勇ましく、燃えるような闘志が伝わってくるような感じがします。
その気持ちは10小節目の3拍目(アウフタクト)のbのメロディーから始まり、燃えるような闘志はb’ でさらに高まり、気持ちも高揚します。
そんな気持ちを表現するのに20小節目の ”シド” からほんの少しだけクレッシェンドをかけるようにして21小節目の ”レミ” に向っていくようにすると雰囲気が出ると思います。
22小節目の ”ラシ” から22小節目の ”ドレ” にかけても同じです。
ただし、全体の音量は mf なので、そのことを忘れないように。
それから、bもb’もタイで結ばれた音はよく聴くことが大切です。
何をよく聴くのかというと、音量と長さです。
タイで結ばれた長い音は、弾いた瞬間から音量が減っていくのをよく聴き、その次の音は減ってきた音よりも極端に大きく弾いてしまわないということです。
そして、タイで結ばれた音の長さは正確にとるということ。
特に17小節目と25小節目にあるタイには気をつけて、その後にある4分休符にまで音が伸びていかないように気をつけたいところです。
3連符。
3連符とは1拍に3つの音を入れることですが、タタタと3つ偏ることなくきれいに入るといいですね。
メトロノームを使って3連符を手拍子で打つ練習は効果的だと思います。
その時、お参りのようにパンパンと手を合わせて叩くのではなく、力を入れないようにして、右手の指で左手の手の平を軽く打つような感じで。
手を打つ時の力加減をそろえて、3連符を打つようにします。
それを弾くことに置き換えて、3つの音が同じくらいの音量で弾けるように練習します。
始めのうちは特に真ん中の音だけが強くなったりすることが多いと思いますが、気をつけて何度も弾いているうちに音量がそろってくると思います。
そして通して弾いた時に気をつけたいのが、3連符の前のファの音が短くなってしまわないようにということです。
3連符の始まりの音が同じファの音なので、指が早々と鍵盤から離れてしまうのです。
1拍の長さをよく聴いて、タイミングよく3連符のファの音に入れるようにするには、手も指も高く上げてしまわないように、指は鍵盤に触ったまま下がっている鍵盤だけを上に上げるようにすると上手くいくと思います。
3連符に上手く入るタイミングがとれるようになったら、3連符だけが力強くなったりしないように、自然な流れで聴こえるようにバランスをよく聴きながらコントロールしていくときれいに仕上がると思います。
A(27小節目~37小節目)
始めに出てくるA(1小節目~10小節目)と、最後に出てくるA(27小節目~37小節目)はとても良く似ていますが、どんな違いがあるのでしょうか。
A(1小節目~10小節目)
1小節目~4小節目 → a
5小節目~10小節目 → a’
A(27小節目~37小節目)
27小節目~30小節目 → a
31小節目~37小節目 → a’’
注目する点は a’ と a’’ の終わり方の違いです。
楽譜をよく見てみると、9小節目の1拍目に ff がついていますが、35小節目の1拍目には ff はついていません。
a’ は9小節目の1拍目の ff に向って、10小節目で締めくくります。
対して a’’は35小節目の1拍目に向かうのですが、a’ の時よりも少しだけ余力を残しておいて、本当の締めくくりである36、37小節目の2小節で ff にして終わります。
この2小節は一番最後についているアクセントに向って、華やかに締めくくりたいですね。
この a’ と a’’ の違いをよく分かって演奏すると、似ているようでも違っている二つのAを表現することができると思います。
さいごに・・・
ピアノの演奏の解釈は様々なので、ここに書いたのはあくまでも私自身が感じたこととして受け止めていただきたいと思います。
たくさんのことを書いてしまいましたが、どれだけのことができるか。
これにはかなりの個人差があります。
教える側からしたらあれもこれもとたくさんのことを要求してしまいがちなのですが、そうではなく生徒さんのペースに合わせてできることから少しずつ進めていくこと、そしてここに書いたこと全てができたら良くて、そうでなければ良くないということではなく、一つのことができるようになったことに対して認めてあげること。
その過程を大切にして、レッスンをしていきたいと思っています。